「妥当? それとも判断ミス?」シーマ艦隊の旗艦にヘンケン艦長の決断も…『ガンダム』作品で結果的に悲劇を生んだ「決死の行動」の画像
「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY Vol.2」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 人間誰しも「あのときの判断は正しかったのか」と考えてしまう過去が、ひとつやふたつはあると思う。たとえ誤った判断だと後に気づいても、反省すればその後の人生の糧となることだろう。

 戦争を背景に描かれた『ガンダム』作品の世界では、人の命がかかった極限状態のときに重大な判断を迫られることも珍しくない。そんななか、人は冷静に「正しい判断」ができるのだろうか。

 そこで今回はガンダム作品のなかにあった、「判断ミス」が影響したと思われる悲劇的なケースを振り返ってみたい。

■仲間を助けようとした判断により撃沈

 まずは『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場した、ザンジバル級の機動巡洋艦「リリー・マルレーン」の撃沈シーンを紹介する。

 その場面は、第13話「駆け抜ける嵐」の冒頭に訪れる。シーマ・ガラハウ率いる「シーマ艦隊」は、デラーズ紛争の最終局面で猛火にさらされていた。そのシーマ艦隊の旗艦であるリリー・マルレーンは、傷ついた味方機を少しでも帰還させようと、戦いのさなかにガイドビーコン(艦艇や要塞などから出される発光誘導信号)を出してしまう。

 戦闘中の宙域でガイドビーコンを出せば、有視界戦闘が中心のガンダムの世界では、敵機に艦の位置をさらすことになる。その危険な行為を目撃したシーマは、「ガイドビーコンなんか出すな!」「やられたいのか!」と激怒していた。

 しかし次の瞬間、コウ・ウラキが乗るガンダム試作3号機「デンドロビウム」のメガビーム砲が、リリー・マルレーンに直撃、撃沈されてしまう。

 この流れだけを見れば、リリー・マルレーン側の判断ミスと捉えられそうだが、歴戦の猛者ぞろいのシーマ艦隊の旗艦をあずかる者が、理由もなくそのような凡ミスを犯すだろうか。

 シーマ艦隊は、これまでジオン公国の汚れ仕事を担わされ、その責任を押しつけられた挙げ句、アクシズへの亡命まで拒否されている。故郷を失い、帰る場所もなく、味方にまで疎まれたシーマ艦隊は、一時は宇宙海賊にならざるを得ない状況にまで堕ちた。

 そんな苦境をともに生き抜いたシーマ艦隊の絆は強く、指揮官のシーマを筆頭に家族のような関係性を築いている。それゆえに仲間を守ろうとする気概が強く、少しでも多くの僚機を救おうという意思が働いたとしても不思議はないだろう。だからこそ、あの厳しい戦況でガイドビーコンを出してしまったのかもしれない。

 結果的に旗艦を失い、より多くの被害を生んでしまう結果となったが、リリー・マルレーンの判断を単純に「ミス」と責める気になれないのは筆者だけだろうか。

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