■多岐にわたる「レトロゲーム」のニーズ

 岡嶋さんいわく、レトロゲームのコレクターの多くは「美品」を求める傾向が強いそう。ただ、ソフト、箱、取扱説明書などがキレイな状態でそろったものはなかなかレアな存在。そのため、バラバラに購入する人も少なくないのだとか。

「まずロムだけを購入して、箱付きがあったらまた購入して、キレイな説明書が見つかったらそれを買って……と、コレクションをアップデートしていく方も多いんです。だから、箱だけでも説明書だけでも、ニーズがあるんですよ」

 最近は、「動かないゲーム機でも買い取ります」みたいな広告もよく目にしますが、ハードオフでも動かないハードや反応しないソフトを買い取っているんですか?

「もちろんです。動かなくても汚くても、大丈夫です」

 ソフトの箱や説明書はまだわかりますが、なぜ壊れて動かないものにニーズがあるのか……。岡嶋さんに聞いてみると、意外な答えが返ってきました。

「それでも売れるからです。その要因のひとつとして、個人で修理してしまう人が増えたことがあるのではないでしょうか。昔だったら機械に詳しい人でなければ修理なんてできませんでしたが、最近では、Youtubeにハードやソフトの直し方の動画をあげている人がけっこういますよね。その影響で、自分で直してみようという方が増えたんだと思います」

 ハードオフといえば、動作が保証されていない商品を扱う「ジャンクコーナー」が名物ですが、そんなレトロゲーム人気に後押しされてか、ジャンクコーナー人気も上昇中なのだとか。ちなみに、自分の名前が書いてあるソフトでも、ちゃんと買い取ってくれるそうです。

 コレクションやリサイクルなど、購買層のニーズはさまざまで、どんな商品でも売れてしまうほど盛り上がっているレトロゲーム市場。ただ、ここでもう一つ気になることがあります。新品のゲームと違い、すでに生産が終了しているゲームは再販されない以上、世の中にある数には限りがある。そして売れれば売れるほど絶対数は減っていき、その分、希少価値は高くなる一方のはず。はたして仕入れは人気に追いついているのか。さらに品切れになってしまうことはないのでしょうか。

「これだけ市場が盛り上がっているとはいえ、日本にまだまだレトロゲームが眠っています。都市部以外のエリアでは、昔お子さんが住んでいたお部屋から掘り出し物が見つかったり、ご実家を掃除した際にたくさんのゲームが出てきたりというケースがまだあるんですよ。とくに年配の方はゲーム体験をしていませんから、ゲームが売れるとは思っていない方も少なくないんです。でも最近では店で買い取りしていることに気付いて、持ち込んでくれる方も増えてきました。え、こんな値段になるの? って驚かれる方も多いですよ(笑)」

“ゲームが好きだから欲しい!”という健全な欲求が市場を動かし、今後も多くの人がレトロゲームを楽しめることを願わずにはいられません。

 

■プロフィール
株式会社ハードオフコーポレーション 執行役員
岡嶋雄一さん
直営店舗運営部部長。中古品の買取・販売店として、日本全国・海外に900を超える店舗を構えるハードオフグループの直営店を管轄。

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