■徹底した現場主義を貫いたサラリーマン刑事・青島俊作

 中国人研修生・王(滝藤賢一さん)のビール誤発注、すみれの辞表提出、過去の殺人事件に繋がる誘拐殺人事件、真下の息子誘拐事件と「隠蔽」にまつわる大小様々な事件が立て続けに勃発した『FINAL』。主人公の青島はというと、警部補に昇格し「湾岸署刑事課強行犯係係長」として、一つ一つの事件に全力で向き合っていた。

 警察組織のやり方に疑念を抱き、何かと上層部に食って掛かる現場ファーストなスタイルは今回も変わらない。しかし、鳥飼の策略にハマって事件と無関係の人物を連行し、室井とともに誤認逮捕と自白強要の責任を負わされてしまう。しかも、室井と違って所轄の刑事である青島は扱いも軽く、あっさりクビを切られてしまった。 

 警察手帳を没収された青島だが、真下の息子誘拐事件が起こると室井に「俺はあんたを信じる。あんたも俺を信じてくれ。これは俺たちの事件だ」と伝え、独自捜査を開始。犯人の経路を追って町中をひたすらに走り回った。青島の決意を受け取った室井は電話であらゆる情報を共有しながら指示を出し、現場と本部の見事な連携捜査で事件を解決に導いた。

 テレビドラマ最終回で青島が室井に言った「あんたは上へ行け! 俺は現場で頑張る」の言葉が実現した今作。事件解決後に警察手帳を返還された青島は、ラストでは、記者会見で室井に意見を求められるも「現場に行かなきゃ」と笑顔で次なる事件に走り出していく。2人が再び同じ事件に立ち向かう姿を見たくなるシーンだ。

 様々な事件が同時進行で描かれる『踊る』シリーズ。『FINAL』で扱われた誘拐殺人事件も、最後に相応しく、複雑で闇深いものだった。すみれのように、もしかすると再登場はないかも……と思う人物もいるが、新作劇場版でも主要メンバーの元気な姿が見られたらと淡い期待を抱いてしまう。

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