今年の夏も暑い。気象庁は今年の7月を「全国の平均気温が統計開始以来最も高かった」と評しており、8月も35度オーバーの猛暑が各地で続いている。こうも暑いと、何をやる気も起きなくなるのが本音というものだ。
こんな時こそ、いつも元気な漫画キャラを見習うべきかもしれない。
たとえば、国民的お巡りさん“両さん”こと両津勘吉が大暴れする『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治氏)には、派出所のメンバーが猛暑に苦しむ話が数多く存在する。そのなかには、両さんが持ち前の機転で暑さをチャンスに活かすエピソードも少なくない。自然に対して奮闘する両さんの姿から、この夏に打ち勝つパワーをもらえるのではないだろうか?
そこで今回は、漫画界屈指のバイタリティを持つ両さんの真夏対策エピソードを紹介しよう。
■亀有公園を人工巨大ビーチに!「出現!南国パラダイスの巻」
まずはコミックス86巻収録「出現! 南国パラダイスの巻」から見てみよう。40度の酷暑にうんざりした両さんは夏休みをとろうとするが、10月まで休みはとれないと知らされて憤慨する。
「こっちが行けないのならば! 向こうから来てもらう」
両さんがそう言って超大金持ちの後輩・中川圭一に相談をした翌日。派出所の裏にあった亀有公園は一夜にして、青いプールと白い砂浜が広がるリゾート施設に生まれ変わっていた!
発起人はもちろん両さんである。中川財閥の経済力を利用して公園の地主を丸め込み、中川レジャー開発の実験場として派出所の裏に人工ビーチを造らせたのだ。日傘や携帯扇風機などで暑さ対策をしている私たちとは、まるで発想のスケールが違う。
本当にビーチを向こうから持ってきた両さんは大はしゃぎ。仕事が終われば派出所の窓から海に飛び込み、地元住民から入場料をとって商売をし、ついには「美観を損ねる」として派出所をプールに沈める仕掛けを用意する。やりたい放題だ。
最終的には住民の要望でビーチは元の公園に戻された。「今となってはあの海が懐かしいな」と振り返る両さんの笑顔からは、夏を堪能しきった男の清々しさが感じられる。
■携帯クーラーは空調服のはしり?「クーラー完備!?ニコニコ寮の巻」
突拍子がないようで的を射たアイデア商品を発明するのは、両さんの得意技のひとつだ。90巻収録「クーラー完備!? ニコニコ寮の巻」では、未来の私たちから見ると「アリなんじゃないか?」と思える真夏対策グッズを両さんが編み出している。
警察寮「ニコニコ寮」に住む警官たちは猛暑に苦慮し、両さんになんとかしてほしいと懇願する。そこで両さんが考えたのが、耐熱服とクーラーを合体させた“携帯クーラー”だ。
宇宙服のように全身を包み込む耐熱服に小型クーラーを背負わせた携帯クーラーはかなり重く、少し動いただけで汗をかくほど疲れる。そこで備えつけのクーラーを点けると冷風が服の内部に送り込まれ、一瞬で汗が乾くほど涼しくなれるのだ。
これなら真夏日に外を出歩いてもちっとも暑くない。昨今暑さ対策グッズとして注目を集めている空調服を思わせる設計は、両さんの先見の明を感じさせる。
素晴らしいアイテムに見える携帯クーラーだが、実は欠点があった。クーラーを背負っているせいでひとりではスイッチに手が届かず、誰かに操作してもらわないと冷風の強弱を調節できないのだ。作中ではクーラーを切れなくなった人が「寒くて死にそうだ」と凍えてしまっていた。夢の携帯クーラーには多くの課題があるようだ。