■どんなときも崩れない副官のポーカーフェイス…要潤

 今回で4作目となる映画『キングダム』だが、1作目から登場していたキャラクターが新たに戦場で戦う場面も少なくはない。

 たとえば、大将軍・王騎の副官として登場していた騰も、本作で初めて明確な戦闘シーンが描かれたキャラクターだ。

 騰を演じているのは、要潤さんである。いくつもの過酷なアクションシーンをこなした要さんだが、騰を演じるにあたりとくに気を配ったのは、その“ポーカーフェイス”ぶりだったという。

 騰は非常に淡々としたキャラクターではあるが、冷徹というわけではなく、常にフラットな感情で物事を把握している人物だ。騰ならではのこの性格を常に頭の片隅に入れ、要さんはそれぞれのシーンでの演技プランを練っていった。

 ビジュアル面で言えば、“まつ毛”が印象的な騰だが、映画版ではアイライナーを駆使するなど、メイクの上でも工夫を凝らしていることがうかがえる。原作漫画のビジュアルに近付けつつも、それでいて現実感のある造詣とすることにも注力していた。

■毎日の“素振り”が生み出した美しい女将軍の姿…長澤まさみ

『キングダム』で活躍するキャラクターは、なにも男性だけではない。戦場で猛威を振るう女性キャラクターも、本シリーズの大きな魅力の一つだろう。

 なかでも、“山界の死王”の異名で恐れられる女将軍・楊端和は作中でも人気の高いキャラクターなのだが、映画で演じているのが長澤まさみさんだ。

 普段、激しいアクションシーンを演じることが少ない長澤さんだが、楊端和の持つ凛とした強さを体得しようと、なんと毎日、ベッドに向けてひたすら剣を振り、当てないように寸止めを繰り返す“素振り”をおこなうことで段は使うことのない筋肉を鍛え、剣の使い方を身に着けていた。

 結果、長澤さんは原作同様、いかなる敵にも屈しない楊端和の佇まいを、絶え間ない努力によって見事に再現。彼女のパワフルで精密な殺陣は、本作の見どころの一つとなっている。

 

 今回の『キングダム 大将軍の帰還』に登場する最大の敵キャラクター・李牧を演じた小栗旬さんは、怨敵として多くのキャラや視聴者に敵視されていることをうけ、「今日ここに来るのも憂鬱だった」とコメントを残している。彼をはじめ、今作の演者たちが日々、いかに“役作り”に真剣に取り組んでいたかがうかがえるエピソードだ。

 原作人気もさることながら、キャラクターを全力で再現しようとする演者たちの知られざる努力も、映画版の大ヒットを生み出した大きな要因といえるだろう。

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