大人気シリーズの『機動戦士ガンダム』には、数え切れないほどの外伝やスピンオフ作品が存在する。『SDガンダム外伝』もそのひとつで、「カードダス」と呼ばれるバンダイのカードゲームから生まれた物語だ。ナイトガンダムをはじめとするSDガンダムたちが、RPG風の世界を舞台に活躍する姿が描かれている。
この『SDガンダム外伝』から端を発するナイトガンダムのシリーズは、カードダスを飛び越えてアニメ、漫画、ゲームなどマルチに展開。一大ブームを巻き起こした。
とくにゲームになった『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』シリーズは、ガンダム作品としては珍しいRPGであり、根強い人気を誇っている。
そしてちょうど34年前の1990年8月11日は、知る人ぞ知るファミコンの傑作RPG『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』が発売された日。そんな記念すべきタイミングに、ファミコン版『SDガンダム外伝』シリーズの魅力を振り返りたい。
■シリーズ1作目は姫を助ける王道ストーリー
シリーズ1作目のファミコンソフト『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』(バンダイ)が発売されたのは1990年8月のこと。同年2月に『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』が発売されており、「RPGといえばドラクエ」という印象がとくに強かった時代だ。
そして『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』のグラフィックを見ても分かる通り、いろいろな面が『ドラクエ』によく似ている。オープニングでフラウ姫がさらわれ、ナイトガンダムが救出の旅に出るという流れも、初代『ドラクエ』を彷彿させる始まり方だった。
一応補足しておくと、当時のファミコンは『ドラクエ』によく似たシステムのRPGがたくさん生まれており、それほど珍しい話ではなかった。
しかし、『ナイトガンダム物語』シリーズが名作と言われるのは、プラスアルファのオリジナル要素が充実していたからに他ならない。たとえば「カードダス」のシステムだ。
冒頭で『SDガンダム外伝』は、「カードダス」と呼ばれるバンダイのカードから生まれたと触れたが、その要素をうまくRPGの中に落としこんでいる。
ゲーム内にカードダスの自販機があり、全90種類のカードがランダムで引ける。それも本物のカードダスと同じイラストをドット絵で再現していた。しかも当時、現実世界で1回20円だったカードダスが、ゲーム内では1回20ゴールドで引けるというのも粋なはからいである。
集めたカードはゲーム内のアルバムで眺めるだけでなく、世界のあちこちにいるカードダスバトラーとカードバトルを行うこともできる。
ほかにも、全滅時にお金が減らない「生命保険」のようなシステムや、設定金額までお金が貯まると知らせてくれる「お小遣い帳」といったユニークなシステムも実装。王道RPGライクな安心感に加え、本作ならではの斬新さがマッチした作品だった。
そして本シリーズ最大の特徴として、ガンダムをはじめとするMSはロボットではない。生命体として扱われているため、人間と同じ大きさで普通に生活している。これは従来のガンダム作品で見られない世界観・概念なので、これだけでもおもしろい。
また、ガンダム好きが反応しそうな小ネタも随所に散りばめられていた。たとえば騎士ランバ・ラルは、騎士セイラをパーティに入れることで戦闘を回避できる。これは原作のように、ラルが幼きセイラを世話していた間柄という理由ではなく、女性とは戦えないという彼らしい騎士道精神によるものだ。このように、アニメの原作設定を上手にゲームに落としこんでいる点も秀逸である。