■タロウとゾフィーを一方的に惨殺した火山怪鳥バードン(ウルトラマンタロウ)
『ウルトラマンタロウ』(1973年放送開始)は、宇宙科学警備隊ZATの一員である東光太郎がウルトラ兄弟から力を与えられ、6番目のウルトラ兄弟・ウルトラマンタロウとして活躍する作品です。初めてウルトラの母が登場し、より世界観が深まった作品としても知られています。
同作には恐ろしいエピソードが数多くありますが、とくに恐怖を感じたのが、第18話「ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!」ではないでしょうか。タイトルでがっつりネタバレしている感はありますが、タロウだけでなくウルトラ兄弟の長兄であるゾフィーまで殺されてしまうエピソードです。
この回に登場した「火山怪鳥バードン」は、まがまがしい色をした肉食怪獣。鋭いクチバシで、タロウの全身を何度も突き刺します。激痛に苦しみ逃げまどうタロウの姿や、タロウの胸にクチバシが突き刺さる痛々しい場面など、小さな子どもにとっては観るのもつらいシーンが多数ありました。
そしてバードンにめった刺しにされたタロウは、ついに力尽きて死亡。目から光を失ったタロウの亡骸が横たわるなか、バードンは同時刻に姿を現していた怪獣ケムジラを殺して捕食するという、おぞましい場面も描かれます。
しかし、この回が恐ろしいのはこれだけではありません。タロウのいなくなった地球にゾフィーがやってきて、バードンと戦闘を開始。当初は軽快な動きでバードンに猛攻をかけたゾフィーですが、バードンが反撃で放った火炎放射をまともにくらうと形勢は逆転します。
猛火に包まれたゾフィーの頭部は黒く焼け焦げ、さらにタロウのときと同様に全身をクチバシで突き刺されるとゾフィーはうつ伏せに突っ伏したまま死亡したのです。
その無惨なゾフィーの姿を目の当たりにしたZAT隊員の顔には絶望の表情が浮かび、テレビで観ていた私たちも同じような表情をしていたはずです。これが宇宙からやってきた怪獣ならば「そういう凶悪な敵もいるのかも……」と思えますが、地球にいた怪獣だと分かって心底ゾッとした記憶があります。