■ハイレベルな映画風演出が光る『忍者龍剣伝III』

 テクモの『忍者龍剣伝』シリーズの三作目、『忍者龍剣伝III ~黄泉の箱舟~』(1991年発売)は、ファミコンでのシリーズ最終作になります。それだけにゲーム内容、グラフィックともにファミコンとは思えないほど洗練されていました。

 同作はファミコン版『キャプテン翼』から始まった「テクモシアター」と呼ばれる、映画的な視覚効果を追求したゲームとして製作。章と章の間に挿入されるムービーシーンは、まさに映画を見ているような臨場感があり、ストーリーに没入させられます。

 また、各ステージごとに美しく細部まで描かれた背景グラフィックは「圧巻」の一言で、多重スクロールも多用されていました。とくに高速で足元を流れる雲は、高高度を飛行する次元戦艦での戦いに緊張感をもたらします。そのファミコンのゲームらしからぬ繊細な表現に、誰もが目を奪われたのではないでしょうか。

 個人的には「走る」「張りつく」「ぶら下がる」「ジャンプ」など、リュウ・ハヤブサの滑らかなモーションも秀逸に感じました。

■美少女とメカをアニメ風に描ききった『メタルスレイダーグローリー』

 最後の一本は、ファミコンにおける最高峰のグラフィックスを語るうえで、どうしても外せないタイトルである『メタルスレイダーグローリー』(ハル研究所/1991年発売)です。主人公の手元に届いたメタルスレイダー(ロボット)の謎を巡るアドベンチャーゲームで、8メガビットの大容量ROMをフルに使ったキャラクター描写やアニメーションがぎっしり詰まった作品でした。

「緻密に描かれた美少女」と「動きまくるロボット」のどちらが見どころかは悩むところですが、個人的には、やはりロボットの描写に軍配が上がります。

 駐機された多数のメタルスレイダーをエレベーターから見下ろすシーンや、カタパルトからメタルスレイダーが発進するシーン、そして多彩な武器を使って僚機とともに戦うバトルシーンなど、そのどれもが素晴らしいアニメーションに仕上がっています。

 もちろんロボアニメ好きの心をくすぐる場面ばかりで、演出まで含めて、ここまでグラフィックとアニメシーンに魅せられたファミコンソフトは記憶にないレベル。メカに興味のある人には、ぜひ一度見てもらいたい作品です。

 ファミコンの頃はブラウン管のテレビ画面に映ることを前提に、ドットのにじみまで考慮してグラフィックを作っていたそうです。現在の液晶モニターに映したものを見ても、当時と同じ感動は味わえないのかもしれませんね。

 そして、もちろん今回紹介したタイトル以外にも、美麗なグラフィックが売りだったファミコンゲームはたくさんあります。皆さんが、グラフィック面でファミコンの頂点だと感じたタイトルは何だったでしょうか。

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