スポーツ漫画に登場する悪役キャラは、そのインパクトの強さや卑劣さで読者の印象に残る。勝つためなら手段を選ばない彼らは、「正々堂々」や「スポーツマンシップ」といった言葉とは無縁の存在だ。そのため、主人公たちは試合中にはげしく心を乱されてしまう。
しかしそんなヒールキャラの登場によって、物語が大いに盛り上がることがあるのも確かである。そこで今回は、反則上等で試合に臨むヒールなキャラを紹介していこう。
■卑劣すぎて逆にスゴい…?『黒子のバスケ』花宮真
藤巻忠俊氏の『黒子のバスケ』(集英社)にはヒールキャラが多数存在するが、あえて反則を狙ってやるのは花宮真だろう。花宮は「無冠の五将」と呼ばれる天才のひとりで、「キセキの世代」が在籍していない霧崎第一高校の選手として登場した。
花宮は審判に見えないよう相手の足を踏んだり肘打ちを入れたりして、対戦相手を確実に負傷させる。しかも基本的にチームメイトに指示を出して攻撃をするため、自分の手は汚さないという卑劣ぶりだ。
そんなチームなので、対戦すると決まって負傷者が出てしまうあり得ない展開になっているようだ。主人公の黒子テツヤが所属する誠凛高校の木吉鉄平も、かつて花宮に膝を負傷させられ、しばらくバスケができなくなってしまった。
花宮は反則を楽しむかのようにプレーしているキャラなので、かなりの外道といえるだろう。しかも、あの仏のような性格の黒子を本気で怒らせていたので、ある意味スゴい……。
普通にプレーをしても技術力が高いのに、あえて反則を選んでいるところからも性格が悪いことがうかがえる。そして、反則プレーで勝てなくても何度も同じ行為を繰り返しているので、改心をする気もないのだろう。
ここまでラフプレーに固執しているキャラは珍しく、プレー以外では手を出したりしないところからも花宮なりの美学があるのかもしれない。とはいえ、まったく共感はできない……。
■野性的なサッカーが特徴!『キャプテン翼』日向小次郎
次は高橋陽一氏による『キャプテン翼』(集英社)の日向小次郎を紹介したい。日向といえば大空翼と肩を並べるエースで、野性的なサッカーをするのが特徴だろう。
彼はかなり荒々しい性格なのだが、その背景には家庭が貧しく、なんとしてもサッカーで食っていく覚悟があるからだ。苦労人であるがゆえの異様なハングリー精神の持ち主で、作中でもかなりキャラ立ちしている存在である。
日向が試合中に見せるラフプレーは相手にわざとボールをぶつけるというもの。キーパーの顔面にボールを当てて戦意喪失させたり、相手の腹部を狙ったりと、かなり難易度高めの技を披露している。
それでも翼が所属する南葛SCには勝つことができなかったので、噛ませ犬感は拭えなかった。そもそも、これが小学生の試合なのも驚きなのだが……。
しかし、翼たちとの試合を通して自分のやり方が間違っていたと気付いた日向は、そこから急成長を遂げて世界で活躍する選手にもなれた。才能があり何より根はまっすぐな努力家でもあるので、ただのヒールで終わらなくて本当に良かったと思う。