■トキワ荘メンバーのごちそうだった「松葉のラーメン」
──トキワ荘といえば、現在は「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」も建てられました。鈴木伸一さんの特別企画展「鈴木伸一のアニメーションづくりは楽しい!!~トキワ荘からアニメの世界へ~」も7月15日まで開催中ですが、建物の再現度は、実際のところどれくらいですか?
鈴木:エレベーターとかくっついちゃっているけど、かなり高いですよ。2階に上がる階段がギシギシいうんですけど、あれには驚きましたね。実際にそうだったんだから(笑)。そこまでちゃんと再現されているんですよ。そもそも、あの外観の元は僕なんです。
──それは、どういうことでしょう……?
鈴木:安孫子氏が当時つけていた日記をまとめた本を出版する時に、頼まれてトキワ荘の絵を描いたんですが、あれはその形や色を再現したものなんです。
──実際に住んでいた鈴木さんのイメージ通りのものがそこにある……ということですね! ちなみに漫画家のみなさんの部屋は2階に集中していたようですが、1階はどのような感じだったのでしょうか?
鈴木:1階は……漫画家連中は誰も行ったことがないんじゃないですか? 玄関をくぐったらすぐ階段があるから、下の階の住人との交流もまったくなかったですね。
──漫画家の皆さんにとって謎の空間だった1階が、「トキワ荘マンガミュージアム」では展示スペースになっているというのは、ある意味正しいのかもしれません(笑)。トキワ荘といえば、近くにある、みなさんがよく利用したという中華料理店「松葉」も“聖地化”しています。やはり「松葉」には思い入れがありますか?
鈴木:一番近くにあった外食できる店でしたからね。会合でみんなが集まった時には、安孫子氏がよくみんなの分を注文しに行っていました。あの当時は松葉のラーメンはごちそうでしたよ。おいしかった。今ならもっとおいしいものもあるんでしょうけどね。
【鈴木伸一プロフィール】
1933年長崎県生まれ。中学時代からマンガの投稿を行い、1955年にトキワ荘に入居。1956年、漫画家・横山隆一の主宰するおとぎプロに入社し、以降、現在までアニメーション制作に携わる。2004年、アニメの自主制作集団「G9+1」を結成。2005年には、杉並アニメーションミュージアム館長に就任した(現在は名誉館長)。
現在「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」にて、特別企画展「鈴木伸一のアニメーションづくりは楽しい!!~トキワ荘からアニメの世界へ~」が開催中(7月15日まで)。
詳しくは、「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」ホームページまで。
https://tokiwasomm.jp/