7月3日からアニメ2期が放送開始された『【推しの子】』。11月28日からは実写ドラマの配信、12月20日には実写映画の公開が控えており、今後ますます盛り上がりをみせることが予想される。
本作は芸能界を舞台としており、時にその華やかな世界の裏の「リアル」も描かれているのが魅力のひとつだ。そうした描写に説得力があるのは、原作担当の赤坂アカ氏が徹底的な取材を意識しているからこそだろう。今回は、そんな本作で描かれた「芸能界のリアル」について紹介していく。
■給料問題に裏事情…アイドルが直面する厳しい現実
『【推しの子】』ではお金の話がたびたび出てくるが、とくにアイドルの給料については初期の頃から触れられている。
作中では歌唱印税やテレビ出演料はメンバーと山分け、ライブが黒字になるかは物販頼み、おまけに衣装代は天引き……と、シビアな事情が明かされており、キラキラした姿とのギャップに驚かされてしまう。作中で主人公の星野アクアが妹のルビーの「アイドルって月給100万くらい稼ぐものじゃないの?」という問いに「月100万はマジで一握り」と答えているが、よほど売れていない限り金銭的に厳しい現実があるというのも想像に難くない。
また、アクアがアイドルを目指すルビーに言い放った「アイドルを夢 見るのは構わんけどさ アイドルに夢を見るなよ」というセリフも印象的だ。彼はワケあって妹に夢を諦めさせたいと思っており、そのためにキツい物言いになっているのだが、このセリフは紛れもない本心でもあるだろう。のちに続く、基本薄給・30歳前で定年・卒業後の業界生存率も低いといった話が生々しい。
原作4巻39話で登場したアイドル・鈴城まなのエピソードも印象的だった。彼女はもともとアイドルオタクで、17歳のときにオーディションに受かって大人数グループのメンバーに選ばれた。
その後、そこそこ人気も出て、本人も語っている通り「アイドルとして成功した方」ではあったが、そのうち現実が見えてくるようになる。事務所の縛りに人間関係、ふとした瞬間に見える業界の闇など、楽しくてキラキラしているだけではない部分が……。
まなは新人アイドルとなったルビーのステージを偶然見かけ、彼女と自分の差を痛感してあっさり引退を決意する。自分の限界を客観的に見極め、芸能界からフェードアウトしていく姿がリアルで、現実でも彼女のような存在は少なくないのだろうと思わされるエピソードだった。