■他人事じゃない…SNSの光と闇

 SNSは現代を生きる人間にとって欠かせないものとなったが、それは芸能人にとっても同様である。ルビーたちが新人アイドルの実績作りとして動画投稿サイトを活用するエピソードもあり、もはや芸能活動においても重要なツールのひとつとなっている。

 また、自分の名前を検索して世間の声をリサーチする「エゴサーチ」の話も生々しい。ルビーとともにアイドル活動する元天才子役・有馬かなは「世は大エゴサ時代!!」と語り、ネットの反応をセルフプロモーションに役立てる重要性を説いている。彼女によればアイドルの9割はエゴサをしているそうで、その真偽のほどはともかく、芸能活動においてSNSでの反応が無視できないものになっているのは事実だろう。

 このように、SNSはうまく使いさえすればさまざまな面で役立ちコスパも良い一方、一歩間違えれば大変なことになるリスクもある。作中では、何気ない投稿に追い詰められる登場人物の姿や、ちょっとしたことで「炎上」するSNSの怖さもたびたび描かれてきた。悪質なファンに追いかけられないよう「外での写真は全て予約投稿が基本」という、自衛のためのルールが紹介される場面もある。

 こうしたリアルな描写は、芸能人に限らず、われわれ一般人がSNSとの付き合い方を考え直すきっかけにもなるかもしれない。

 

 芸能界を舞台にその光と闇を描く作品『【推しの子】』。メインのストーリーはもちろん、あちこちに散りばめられたリアルな「芸能界あるある」も見どころのひとつとなっている。
 7月から放送開始されるアニメではどんな裏事情が描かれていくのか、その点にも注目しつつ作品を楽しんでほしい。

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