■社会現象を起こし「全巻買い」が続出した『鬼滅の刃』『SLAM DUNK』

 1億部超え作品の中でも注目なのが、社会現象を巻き起こした吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』である。一時期は街に炭治郎と同じ市松模様の子どもたちが溢れ、お年寄りでさえもタイトルを認知するほどの知名度を誇った。

 同作の連載は2016年から2020年で、コミックも全23巻と他の作品に比べて短い。にも関わらず、2020年に発売された22巻で1億部を突破している。これは連載開始からわずか4年という『ONE PIECE』をも凌駕する早さで、爆発力を裏付ける超人的記録だ。

 一方で、同作のアニメ放送前の発行部数は250〜350万部程度。この数字も十分にヒットと言えるものではあるが、同作の人気に火をつけたのは2019年4月に始まったアニメ放送だったのは間違いない。

 アニメ第一期終了後には、2019年に発売された16巻までのシリーズ累計発行部数が1200万部を突破。それから、新刊1巻ごとに2000万部ほど増加して21巻時点で8000万部まで伸び、2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開を機に、史上最速で1億部を達成した。当時はメディアでも同作の話題を聞かない日はないほどの人気で、アニメや映画をきっかけに「全巻買い」する人も続出。書店で『鬼滅の刃』の棚がゴッソリ空く光景も珍しくなかった。

 その後、23巻で1億2000万部に到達。完結後も勢いは止まらず、2021年にはついに1億5000万部を超えた。

 完結後に部数を伸ばした作品でいえば、井上雄彦氏の漫画『SLAM DUNK』も当てはまる。同作が1億部を突破したのは完結後の2004年のこと。その後、突破記念の感謝イベントを行ったことで再び盛大に盛り上がり、2022年の映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開で人気が再熱。こちらも『鬼滅』同様に「全巻買い」を起こしたことが話題となった。

『ドラゴンボール』が42巻、『SLAM DUNK』が31巻ということを考えても、レジェンド漫画は単行本売り上げの爆発力や人気の持続力がずば抜けて高いことがわかる。

 連載中のものでは、堀越耕平氏の『僕のヒーローアカデミア』が2024年発売の40巻で1億部を突破した。40巻は現時点での最新刊で、ヴィランとの戦いがいよいよクライマックスに突入し最大の盛り上がりを見せている。完結も近いとされていることから、さらに部数を伸ばしていくだろう。

 もちろん、『週刊少年ジャンプ』以外も負けていない。例えば、2億7000万部という驚異の部数を誇り、年齢層を問わず多くのファンを獲得している青山剛昌氏の『名探偵コナン』。『週刊少年サンデー』で現在も連載中だが、未回収の謎も多くまだまだ物語は続きそうだ。

 そしてじわじわと部数を伸ばしていったのが、『週刊少年マガジン』で1989年から連載が続いている森川ジョージ氏のボクシング漫画『はじめの一歩』。同作が1億部を突破したのは、2023年発売の138巻と最近のことで、現役を引退しセコンドとなった一歩の新たな活躍が描かれている。

 世界から見ても、日本の漫画は飛びぬけて人気が高い。今や文化の一つとなった分野だが、ここまでの成長を遂げたのはすべて、これまで道を切り開いてきた作家たちの想像力と努力の賜物である。

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