■森田剛さんがダークヒーローに挑戦『ブラック商会変奇郎(シャドウ商会変奇郎)』
『週刊少年チャンピオン』にて1976年から連載されていた『ブラック商会変奇郎』は、藤子Aさんが得意とするブラックユーモアにオカルトを織り交ぜたダークヒーロー漫画だ。後に『シャドウ商会変奇郎』とタイトルが変更されるも、2003年には再び『ブラック』に戻されている。
本作は、1972年に連載されていた『魔太郎がくる!!』の設定を一部継承しており、骨董品店「変奇堂」店主の孫であり普段は気弱な中学生・変奇郎が魔力と骨董品を使って悪人を追い詰めるというストーリーだ。さらに変奇郎は中学生ながら、悪人を突き詰めた後に請求書を渡して恐喝するという、タイトルの「ブラック商会」に通じる闇の顔を持っている。ちなみに作中に出てくる骨董品は藤子Aさんが実際に所有しているものが多いのだとか。
そんな本作が実写化されたのは1996年。原作第2話の「万引き」が『シャドウ商会変奇郎』というタイトルで、スペシャルドラマ(テレビ朝日系)として放送された。
変奇郎を演じたのは、当時V6のメンバーだった17歳の森田剛さん。今ではダークな役もこなす実力派俳優として活躍する森田さんだが、デビューして間もなかった当時は、制服に黒マント、そして目元を隠す仮面を身にまとって初々しい演技を見せており、作中ではワイヤーアクションや殺陣まで披露している。
さらに本作は、脇を固めるキャストも演技派揃いの豪華布陣。変奇郎の祖父で「変奇堂」店主の変奇左エ門役を丹波哲郎さん、母親役を岡江久美子さん、「変奇堂」の土地を狙う専務役に萩原流行さんなど、今は亡き名優たちが出演している。
藤子不二雄Aさんの漫画は世界観・キャラクターともに魅力的で、実写化してもその面白さが薄まることはない。ただ、『笑ゥせぇるすまん』『シャドウ商会変奇郎』は再放送もソフト化もなく、現在は見ることのできない「幻の作品」となっているのが残念でならない。『忍者ハットリくん』の1966年度版実写ドラマに関しては、現存する1話と14話のみを収録したDVDが発売されている。気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか。