■大出世した人物も…湾岸署メンバーの肩書き変遷

 室井らキャリア組は少人数しか採用されない国家公務員であり、湾岸署の面々をはじめ日本の警察官は大多数がノンキャリアと呼ばれる地方公務員だ。こちらは大卒・高卒と学歴も幅広く、階級を上げるには現場経験と試験が必要になる。

 主人公の青島俊作は青山学院大学経済学部を卒業して一般職に就くが、刑事に憧れていたため転職して警察官になったというキャラクターだ。

 練馬警察署地域課で交番勤務を経験した後、巡査部長に昇任して湾岸警察署刑事課強行犯係に配属された。その後、異動を挟み映画『THE MOVIE 3』でついに警部補に昇任。強行犯係長になり責任が増していく。

 男勝りで正義感あふれる深津絵里さん演じる女性刑事の恩田すみれは、東京都立城東高等学校を卒業後に巡査拝命していて、青島よりもキャリアが長い。同じ刑事課にいるが所属は盗犯係で、階級は巡査部長だ。前述の通り青島が警部補に昇任しているので、キャリアを追い抜かれた形になる。

 作品に深みをもたらしていた、いかりや長介さん演じる和久平八郎もすみれ同様に高卒採用組だ。初登場時の時点では定年3か月前の巡査長。周囲の信頼も厚く、定年退職後に現役メンバーに呼び戻され、退職者再雇用制度で指導員として刑事課に復帰した。

 最後は湾岸署のお笑いトリオ・スリーアミーゴス。上層部に媚びを売りつつも、ここぞという時に身を挺して部下を守る憎めない上司たちだった。

 北村総一朗さん演じる署長の神田総一朗は、法政大学文学部卒業のノンキャリながら実は叩き上げで警視正まで上り詰めた実力派。さらに副署長・秋山晴海(斉藤暁さん)と刑事課課長・袴田健吾(小野武彦さん)も同様で、秋山は警視、袴田は神田の引退後に副所長になり、それにともない階級も警部から警視に昇任している。

 作中ではほぼ仕事をしていないのでピンと来ないが、ノンキャリで警視・警視正になるのは大変なことなので大出世といえるだろう。

 改めて見てみると、登場人物の多くがキャリアを積み重ねながら昇任を遂げている。特に室井は、青島との「上に行く」という約束を、紆余曲折ありながらも完璧な形で果たした。それがどうして「無職」となったのか……映画の公開が待たれるばかりだ。

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