■避けられない無慈悲な結末にゾクゾク…「ロッカー」

 1990年に放送された織田裕二さん主演の「ロッカー」も、後味が悪いトラウマエピソードだ。

 織田さんが演じるのは産業スパイの悟。あるとき悟は、新型バイオセンサーの設計図を盗もうと、とある研究所に潜入したところ段田安則さん演じる研究員・佐口邦夫ともみ合いになり、彼を殺してしまう。

 とっさに扉が開いていたロッカーに隠れた悟は、佐口の死体を見つけた警備員が警察を呼びに行った隙に逃げ出そうとするが、ロッカーが開かなくなってしまう。そしてすぐに警察が来て現場検証が始まる。

 息を潜める悟の目に飛び込んできたのは、薄気味悪い笑みを浮かべてこちらを見る佐口の遺体。このときの段田さんの表情にゾクゾクしたという人も多いだろう。さらにロッカーの中には佐口の写真があり、そこが佐口のものだったのだと判明する。

 警察が怪しみだした瞬間、業者が「廃棄処分のロッカーはこれか?」と乱入し、悟の入ったロッカーを運び出した。外に出られて安堵する悟だが、行き先はスクラップ工場。気づいて助けを求めるも声は届かず、無惨にもぺちゃんこにされてしまう。

 だが、次の瞬間悟はロッカーの中で目覚めた。ほっとしたのも束の間、ロッカーはクレーンに持ち上げられスクラップ機にかけられる。先ほど見た夢と同様に必死で叫ぶも声は遮られ、今度こそ真上から潰されてしまった。 

 狭いロッカーと迫りくる重機、張り付いた笑顔で見つめる写真の佐口。一つ一つの描写が怖く、思わず汗ばんでしまうエピソードだった。

■呪いの泣き人形…和風ホラーの「見たら最期」

 1992年に放送された「見たら最期」は、オーソドックスなホラー作品。「見た者が死ぬ呪いの〇〇」というのは、ジャパニーズホラーファンにはたまらない設定だ。

 筧利夫さん演じるテレビ局のディレクター・杉山は、心霊番組の撮影で、「人に見せてはいけない」と言い伝えられる“泣き人形”の取材をする。撮影が終わり一同が映像を確認すると、女性の後ろにおかっぱの少女が映っていた。

 そこに電話が入り、同行した心霊研究家の死が告げられる。これを機に撮影に関わったスタッフ、女性が次々と謎の死を遂げていく。杉山は人形を見た人間が死ぬと気づき放送中止を訴えるが、プロデューサーは受け入れない。

 今度は編集室でスタッフが泡を吹いて倒れ、駆けつけると部屋にあるすべてのモニターに少女の顔が……。映像で呪いが広がると確信した杉山は、VTRを奪って女性ディレクターの車に飛び乗り局を出る。

 車内で女性が「あなたと乗ってきた女の子は誰?」と聞くので、杉山が振り向くと、そこにはあの少女が乗っていた。少女に気を取られた女性は運転を誤り、2人はそのまま事故死してしまう。 

 注目はラストシーン。タモリさんが局員に「もう他に見た人はいないのか」と問うと、局員が「それが……他にもいるんです。数えきれないほど」と耳打ちするのだ。つまり、視聴者が見たということ。この時代の視聴者巻き込み型ホラーは斬新だ。

 また、人形の封印を解いた瞬間から少女が映像のあちこちに登場するのだが、この演出も手が込んでいて恐ろしい。

 今はなかなか再放送もされなくなっているが、やはり90年代の『世にも奇妙な物語』はゾクゾクするような名エピソードぞろいである。友人とお気に入りの懐かしエピソードを語り合うのも楽しいだろう。

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