■暗殺者として育てられた少女が活躍する平安ファンタジー…『緋桜白拍子』

 少女漫画のストーリー物といえば、緻密な描写と細やかな時代設定などで読者を引き込むが、藤丞めぐるさんの『緋桜白拍子(ひおうしらびょうし)』もそんな作品のひとつだ。

 1998年より『花とゆめ』および『別冊花とゆめ』で連載され、単行本は全12巻刊行。平安時代を舞台に、刺客育成組織で暗殺者として育てられた少女・梓が、斬鋼糸を操る緋桜の白拍子としてさまざまな陰謀と戦うアクション・ファンタジーだ。梓に思いを寄せる、兵衛督(罪人を捕まえる要職)である子安時迅との切ない恋愛模様にもキュンとした。

 政治的な策略や“暗殺者”という暗いテーマを扱っているものの、明るい絵柄と所々に散りばめられたギャグもあるため読みやすい。さらに、紫式部の『源氏物語』を知っているのなら、女性の役職や肩書に「おっ!」と気付く人もいるだろう。

 本作の続編となる『新 緋桜白拍子』は、『まんがグリム童話』(ぶんか社)にて現在も連載中だ。前作では少女だった梓が、続編では美しい大人の女性となって活躍している。

■主人公は関西弁を喋るケンカ好きな女子高生!…『ショート寸前!』

 最後に紹介したいのが、桜井雪(さくらい すすぎ)さんの『ショート寸前!』。関西の女子高生・黒川さつきはケンカっぱやいが、そんな彼女に思いを寄せるのが一匹狼のような少年・千堂章。互いに好き合いながらも、恋愛はからっきしなさつきと一途な千堂の関係が描かれる。うまく噛み合わない、今でいう「じれじれ」した様子がたまらない作品だ。

 当初は読み切りとしてスタートしたが、読者の好評を得てコミックス5巻が刊行。コミックスにはタイトルをパロディにした描き下ろし『消灯寸前』や、桜井さんが以前描いた短編が併録されている。 

 50年の歴史の中で数多くの名作が生まれた『花とゆめ』の漫画たち。開催中の『花とゆめ展』で、その豊かな世界観に浸ってみてはいかがだろう。

  1. 1
  2. 2