■大人びた小学生のキスにドキドキ『こどものおもちゃ』

『こどものおもちゃ』は、1994年に『りぼん』での連載をスタートした小花美穂氏の漫画である。小学生を主軸に、学級崩壊、芸能界、いじめ、恋愛といったテーマを、絶妙なギャグと絡めながら描いた名作だ。 

 主人公の倉田紗南と羽山秋人は小学生のため、当たり前といえば当たり前なのだが、そこまでキスシーンが多くない。そんな中で印象的だったのが、“社会科見学での不意打ちキス”だ。

 描かれたのはコミック2巻。この頃は秋人がクラスメイトの子役タレント・紗南に片思いをしており、紗南は恋人(ヒモ)兼世話役として雇っていたマネージャーの相模玲を本気で恋人だと思いこんでいた。 

 あるとき玲の元彼女が現れ、紗南は動揺する。玲は「紗南ちゃんが一番大事」と言うが、大人びていた秋人は、玲に「相手が子供だからそのうち冷めると思ってんだ。あんまり子供をナメてんじゃねーぞ」と告げる。一方で、その心の中は嫉妬で燃えていた。

 後日行われた都庁の社会科見学で、紗南は悶々としていた秋人にジュースをあげようとするが、つまづいて頭からかけてしまう。名シーンが描かれたのはそのときだった。頭を拭こうと近づいた紗南に、秋人が不意打ちのキスをしたのである。

 これは秋人なりの好意のアピールだが紗南は全く気づかず、ファーストキスだったうえに人前ということもあり大騒ぎしてしまう。「なんでキスしたの?」と聞かれ、「…キライじゃないから」と答える秋人の不器用さにもニヤニヤしてしまうエピソードだ。

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