■二人のナナの友情と恋物語『NANA』
小松奈々と大崎ナナという同じ名前を持つ二人の女の子が織りなす、重く切ない人間関係を描いた矢沢あい氏の漫画『NANA』。2000年から連載が始まったが、病気療養により2009年に休載している。現在は、コミックス21巻(80話まで)が刊行されており、掲載していた『Cookie』で84話までが発表された状態だ。
21巻に描かれていたのは、ナナの恋人・本城蓮(レン)の死について。薬物中毒で自身のバンド・トラップネストの脱退を申し出たレンは、自分のせいで行方をくらましたボーカル・芹澤レイラに責任を感じ、彼女を迎えに車を走らせていた。記者の尾行に気づいた彼は加速するが、運転を誤って壁に激突してしまう。手以外の原型がないほど、悲惨な事故死だった。
レンはこの世を去り、受け止めきれず心が壊れたナナは、翌日の葬儀で涙も流せずにぼんやりレンの手を見つめていた。そこに未来のモノローグが入り、奈々は大きくなった娘の皐とともにレンを弔うシーンが描かれていた。
『Cookie』掲載分では、奈々がナナを支えるために動く姿が描かれている。奈々と夫のタクミ、タクミとレイラの関係、ナナの心、レン死後のトラネスなど、気になる点を残したまま物語は中断している。
矢沢氏は2022年に開いた初の展覧会『ALL TIME BEST矢沢あい展』にコメントを寄せ、「少しずつでもまた作品を描いていけたら」と語っていた。いつかまたナナたちに会える日を楽しみに待ちたい。
長期休載の作品の中には、あと少しで完結なのに……という絶妙なところで止まっているものもある。もちろん原作者の体調が最優先だが、時間がかかっても結末が読みたいと思う読者は多いだろう。