■「カオス」「皇帝」「ベイガン」「エブラーナ王、王妃」…『ファイナルファンタジー』シリーズ

『ファイナルファンタジー』シリーズには、「元人間だったモンスター」が多く登場する。驚くべきことに、1作目の『ファイナルファンタジー』で、すでにその存在が見られる。

 同作品のラスボスである「カオス」は、過去の世界から4体のカオスを送り込み、世界を恐怖に陥れた存在。その正体は意外なことに、主人公たち光の4戦士に最初に倒されたボス「ガーランド」だった。ガーランドはかつてコーネリアの騎士だったが、セーラ姫を誘拐し、光の4戦士に討たれた。その後、黒水晶の力で2000年前の世界へとタイムスリップし、魔王として生まれ変わった元人間なのである。

 第2作目『ファイナルファンタジーII』の「こうてい」も同じくもともとは人間。「こうてい」は、パラメキア帝国の支配者として登場し、主人公たちの住むフィン王国を襲撃。序盤から悪の支配者として明確に描かれている。冒険の終盤で主人公たちに倒されるも、悪魔に魂を売り地獄の力を得て復活。骸骨のような姿で再びラスボスとして立ちはだかる。

『ファイナルファンタジーIV』にも、元人間のモンスターがいる。主人公・セシルの故郷バロン王国の近衛兵長「ベイガン」も魔物化した人間だ。仲間のパロムとポロムに正体を見破られ、「こんなに すてきなちからをねッ!」と、両手はヘビ、顔はトカゲのような魔物と化してセシルたちに襲い掛かる。

 セシルの仲間・エッジの両親である「エブラーナ王」と「王妃」も魔物化してしまう。エッジの故郷であるエブラーナはゴルベーザの配下であるルビカンテによって滅ぼされる。

 エブラーナ王と王妃はルビカンテの部下であるルゲイエによって、人間のパーツを残されたモンスターに改造されてしまうが、戦闘中に自我を取り戻し、エッジに希望を託して自害する。このシーンは『FF4』屈指のトラウマシーンとして語り継がれている。

 人間だったモンスターという設定は、キャラクターに深い共感や興味を持たせてくれる。そして、その悲しいドラマが、プレイヤーに物語の奥深さを感じさせてくれるのだ。

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