■難解でハードな展開なのに前向きになれる爽やかさ

 小学生向けの『コロコロ』作品なのに、青年漫画さながらのハードな展開も『運命の巻戻士』の魅力だ。

 クロノら巻戻士は時間を巻き戻してターゲットを救うわけだが、その過程となる「救えなかった未来」も描かれている。助けたい人が自分の失敗で何度も死に、そのたびに巻戻士の心もすり減っていく。

「1000回以上やり直しても救えなかった人を見捨てる」なんて回想エピソードもあるくらいだ。話が重いことは否めない……。

 では本作を読んで憂鬱になるかというと、そうではない。人が死ぬシーンは『コロコロ』らしくギャグっぽく描かれているし、苦しいはずのやり直し展開も絶対にあきらめないクロノのおかげで前向きな気持ちで読んでいける。残酷な世界を嘆くより、絶望に立ち向かう巻戻士を応援したい気持ちが大きくなっていく。

 だからこそクロノが“攻略未来”にたどり着いた瞬間、熱くて爽やかな気持ちになれるのだろう。

 ハードな設定をライトな描写で上手に包み込むバランス感覚。それこそが世代を超えて愛される秘訣に違いない。

 

「子どもの頃は好きだったけど、もう全然読んでない」という人も多いだろう『コロコロ』。だが、今回紹介した『運命の巻戻士』は大人が読んでも面白く、元気がもらえる漫画だ。

 ぜひこの機会に、『運命の巻戻士』を読んでみてはいかがだろうか。もし今、お子さんが『コロコロ』にハマっている世代であれば、一緒に読んで熱く語らってみるのも良いかもしれない。

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