■学生刑事・麻宮サキが悪に挑む『スケバン刑事』
『スケバン刑事』は、1975年から『花とゆめ』で連載されていた和田慎二さんによる学園刑事漫画である。ストーリーは、“脱獄不可能”というアルカトラズばりの少年院「地獄城」に収監されていたスケバン・麻宮サキが、暗闇警視に学生刑事としてスカウトされ、私立探偵の神恭一郎とともにあちこちの学校で起こる事件を解決していくというもの。
1985年から放送されたテレビドラマシリーズも人気を博した同作は、難事件に挑む主人公が女性刑事ではなく女学生、さらにヨーヨーを武器にする「スケバン」という斬新な組み合わせが読者の心を掴んだ。第二部からは敵のスケールが大きくなり、身に迫る危機も大きなものとなっていった。
最大の敵は、日本の転覆を図る悪の根源・信楽老。原作者・和田さんの漫画にたびたび登場する彼は、幕末から同じ姿で生きているという摩訶不思議な人物だ。サキは信楽老の企む陰謀を止めるべく彼が拠点としている「梁山泊」に潜入し、戦いを挑んだ。しかし、それが彼女の身に悲劇をもたらしてしまう。
自身の野望のために多くの人を殺してきた信楽老は、人間らしからぬ力をみせる。そして、その戦いの中で神が命を落としてしまった。サキは一人で立ち向かい大ピンチに陥るが、命を落とす直前に神が握っていた銃が死後硬直によって発砲されたことで形勢逆転し、信楽老を倒すことに成功する。
が、サキもまた傷が深く、脱出用ポッドの中で息絶えてしまった。後日、鷹ノ羽高校の卒業式にサキが現れる。皆の前で卒業証書を貰った彼女は、「このヨーヨーももうあたしには用なしだ みんな… あとは頼んだぜ!あばよ!」と笑顔でヨーヨーを投げ、学校を後にした。
入れ違いで現れたムウ=ミサはその話を聞き、驚きながらサキが半年も前に死んでいることを告げる。皆ショックを受け、最後まで学校と仲間を愛していたサキを想い、涙を流すのだった。
バッドエンドにショックを受け、「読後何も手につかなくなった」という読者は当時も多かっただろう。できれば生きて、幸せになってほしかったと願うところだが、しかし、彼らが残した功績や人との絆は今なお色褪せない輝きを放っている。