■80年代のNYを舞台に繰り広げられるサスペンスアクション『BANANA FISH』
1985年から『別冊少女コミック』(現『ベツコミ』)で連載されていた『BANANA FISH』は、少女漫画ではかなり珍しい、吉田秋生さんによる本格的なクライムサスペンスアクション漫画。新種のドラッグ「バナナフィッシュ」を巡って巻き起こる抗争、主人公のアッシュ・リンクスと奥村英二の友情など、読者をひき込んでやまない魅力に溢れた名作だ。
アッシュは、IQ210の頭脳を持つストリートキッズのボス。クールな性格に高い格闘スキルを兼ね備えていて、圧倒的な存在感を放っていた。一方の英二はストリートキッズを取材しにきた大学生で、荒くれた世界とは無縁の青年。穏やかで、慈愛に満ちた癒し系である。
そんな正反対の二人がNYで出会い、血生臭い抗争に巻き込まれながら絆を深めていく。だが、一連の抗争にカタがついた最後に悲劇が起こる。
怪我から復帰した英二は日本に帰国することになり、図書館にいるアッシュに届けてくれと、手紙と日本行きのチケットをシンに託す。
手紙には、英二の暖かい想いが綴られていた。暗い過去を持ち一人で生きてきたアッシュにとって、自分の孤独を理解して受け止めてくれた英二の存在はどれだけ大きく尊いものだっただろうか。
手紙を読んだアッシュは急いで空港へ向かうが、図書館を出た瞬間、事態の終息を知らずに待ち伏せしていたラオに刺されてしまう。しかし、病院にいくことはせず図書館に戻ってもう一度手紙を読み涙を流すアッシュ。そして、穏やかな笑顔を浮かべて命を落とした。
「君は僕の最高の友達だ」、手紙に書かれていたこの言葉にアッシュは救われたのだろう。二人が「友達」という言葉では表せないほど深い絆で結ばれていたことがわかるからこそ、彼の死は読者にとってもショックが大きかった。そして、残された英二を思うと胸が痛くてたまらなくなる。