1977年に創刊され、『りぼん』『なかよし』と並び、昭和から平成の少女漫画界を牽引してきた漫画雑誌『ちゃお』。
創刊から90年代前半あたりまでは他2誌と比較して発行部数も少なかったが、やぶうち優氏の『水色時代』などのヒットを機にじわじわ部数を伸ばしていく。そして、90年代後半には、あらいきよこ氏の『エンジェルリップ』や篠塚ひろむ氏の『ミルモでポン!』などが人気を集め、2002年頃以降は最も発行部数の多い少女漫画誌として君臨し続けている。
さて、トップ雑誌として走り続ける『ちゃお』の人気を支えてきた作家の中には、絵柄を変えて現在も第一線で活躍している人が少なくない。今回は、そんな作家たちを見ていこう。
■『水色時代』からの絵の変化が話題となったやぶうち優氏
まずは、小学3年生から漫画を描き始め、13歳という若さでデビューを果たしたやぶうち優氏。『ちゃお』を背負って立つ人気作家として活躍してきたが、代表作となったのは前述した1991年に連載スタートした『水色時代』だ。小中学生という多感な年頃の少女の成長をリアルに描いた同作は、1996年にアニメ化を果たすほどのヒットとなった。
やぶうち氏は2015年、Twitter(現:X)で自らの絵の変化を比較した「やぶうち優32年進化録」を投稿して話題に。過去には『ちゃおプラス』のインタビューで「デビュー当時から思い通りの目を描けていない。だから連載が切り替わると新たな理想を探していく」と述べていたこともあり、意識的に絵柄を変えていることがファンに知られている。
振り返ると、たしかに顔は作品を追うごとに変化している。『水色時代』あたりまでの絵柄では、顔のパーツはあまり大きくなく縦長でハイライトの少ない黒目が印象的だ。ピュアな印象を受ける絵柄が多く、作品の世界観にあわせた変化だということが分かる。
1990年代中盤からは目の描き方に変化が見られる。たとえば、1994年の『KAREN』の主人公カレンは目が大きくまつ毛があり、ハイライトも瞳孔上部に色が増えてキラキラ感がアップ。より少女漫画らしさが増していた。
小学館の学年誌で連載を持つようになった2000年以降は、さらにキュートさが増していく。たとえば性教育を題材にした『ないしょのつぼみ』では、黒目・ハイライトを含め全体的に大きな目になっていて、子どもらしさが増していた。
そして、2020年の『青のアイリス』では、今まで以上に繊細なハイライトが入って目に透明感が増し、今時の少女漫画らしくなっている。
■イケメンキャラがさらにイケメンに変化した八神千歳氏
『ちゃお』で連載されていた作品の中でも、イケメンキャラで人気を集めた八神千歳氏の作品。2001年のデビュー以降、当時の『ちゃお』の中でも突出して大人っぽい絵柄だった八神氏の作品はどれも刺激的で、読みながらちょっと背伸びした気持ちになったものだ。
たとえば、2002年に連載がスタートした『まんがみたいな恋したいっ!』は、中学生と漫画家という二足のわらじを履く佐倉玲奈が、恋愛漫画のサンプルのためにモテ男子・沖田智哉と付き合うことになるという物語だ。
彼は、どこか力強さを感じさせる切れ長でキリッとした目元の典型的なイケメンだった。反対に、主人公の佐倉玲奈は大きくてまん丸な目で、ハイライトが大きいことや頬が赤いことで純粋さや初々しさを醸し出している。
この男女のキャラの描き分けのギャップが八神作品の魅力のひとつ。『ちゃおプラス』のインタビューで八神氏は、「男の子が多い自分の漫画の世界観を作る転機となったのは沖田智哉」と語っており、その後は、2004年の『キス・キス』といった“逆ハーレム”作品を次々と発表し、イケメン登場率をあげていく。
猫系、遊び人系、肉食系と個性豊かな男子が登場した2009年の『オレ様キングダム』では、絵柄も初期の頃からさらに大人っぽさを増している。とはいえ、この頃はちょっと中性的で“可愛い系”のイケメンが多かった。
2020年から連載中の『溺愛ロワイヤル』では、人狼や吸血鬼といった魔族のイケメン3人衆が登場するが、目がこれまでよりも切れ長で細くなり、令和の流行でもあるクール系の顔へとシフト。デビューから23年がたった今も、最前線で作品を読者に届け続けている。