■過去と未来を繋ぐ壮大なSFストーリー…『TM NETWORK LIVE IN POWERBOWL』TM NETWORK

 前述した『聖飢魔II』のほか、ファミコンには意外にも有名アーティストのコラボ作品が多い。

 そのなかのひとつ、意表をついたコラボ内容で当時のファンを驚かせることとなったのが、1989年にCBSソニーから発売された『TM NETWORK LIVE IN POWERBOWL』だ。タイトルの通り、有名バンド『TM NETWORK』をフューチャーした一作となっている。

 本作は主人公が10年前の世界にタイムスリップし、『TM NETWORK』のメンバーと協力しながら、やがてきたる地球滅亡を回避するべく奔走していくアドベンチャー作品だ。

 いくつかの選択肢のなかから正解を導き出していく点は従来のアドベンチャーゲームと同じだが、ゲームクリアのためには本作独自のコマンド「MUE」を使いこなす必要がある。

 これはいわゆる“ハッキングツール”で、これを利用して電話を掛けたり、電子ロックを解除したりとハッカーのような技術を用いながらストーリーを進めていくのだ。

『TM NETWORK』の面々は、探索パートの節目やクライマックスのライブシーンなどで登場。作中のBGMにも『COME ON EVERYBODY』や『Self Control』といった楽曲のアレンジ版が使われており、ファンならば思わずニヤリとしてしまうことだろう。

 概要だけ聞くとどこか色物な一作にも思えるが、一方で「予期せぬコンピュータの暴走」や「核による人類滅亡」など、どこか現実味を帯びた問題をしっかりとストーリーに組み込んでおり、SF作品としてなかなか骨太なシナリオ構成となっている。

 地球滅亡を回避し、数々のどんでん返しを乗り越えた先に用意されたイベントは、『TM NETWORK』ファンにとっては必見のシーンだ。

 

 今回紹介した以外にも、布袋寅泰さん、所ジョージさん、『THE YELLOW MONKEY』、海外に目を向ければ、『エアロスミス』にマイケル・ジャクソンさんなど、多くのアーティストがゲームの世界に登場している。昨今ではゲームに有名アーティストの楽曲が使用されることも珍しくはなくなったが、一方で、ファミコン時代からアーティスト自身とコラボした作品が数多く登場していることに驚かされてしまう。

 ファンタジーにアクションにSF……コラボする内容やジャンルが多種多様であることも、実に興味深い点だ。

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