昔のドラマや漫画には、ストーリーを大きく展開させるような“事故”がよく登場する。せっかく主人公が幸せになりそうだったのに、婚約者などが事故に遭い、不幸のどん底に突き落とされるといった展開だ。
とくに昭和に人気を博した少女漫画には、「ここで事故が!?」という、ちょっと驚いてしまうようなシーンが多い。今回は、そんな不幸な事故が起きてしまう少女漫画をいくつか紹介したい。
■長年主人公を支えてきたボーイフレンドがまさかの…『アタックNo.1』
1968年から『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』 集英社)にて連載がはじまり、昭和40年代にバレーボールブームを引き起こした浦野千賀子氏による『アタックNo.1』。本作では、主人公のボーイフレンドが事故死するという衝撃的な展開が繰り広げられる。
主人公の鮎原こずえは厳しい練習に耐え、ついに高校の県大会で優勝しインターハイ出場が決まった。そんなこずえを励ましつつ支えてきたのが、同級生のボーイフレンド・一ノ瀬努である。
努はこずえを労い、誕生日を祝おうと話していた矢先、電車の線路内を歩く人を見つけ、助けるためにとっさに線路内に入る。しかし迫ってきた電車と衝突し、亡くなってしまうのだ。
その事故が起きる前日、努はこずえに自分の身の上話をしており、“実は僕には双子の兄がいる”と告げている。今でいう“死亡フラグ”の雰囲気が漂う会話に嫌な予感はしたものの、まさか物語終盤に入り努が亡くなってしまうとは思わなかった。
その後、こずえを支える新たな人物として、努の双子の兄が登場するのだが……。しかし長年こずえを支えてきたボーイフレンドが電車と接触して亡くなるという展開に、当時の読者は大きなショックを受けたのだった。
■ページを開いた瞬間に待つ衝撃事故『砂の城』
1977年から『りぼん』(集英社)で連載がはじまった一条ゆかり氏の『砂の城』にも、「ここで事故が!?」と叫んでしまうような衝撃シーンが登場する。
富豪の娘として生まれたナタリーは、屋敷の前に捨てられていたフランシスと本当の兄妹のように育つ。やがて成長した2人は結婚を誓い合うが、周囲に反対されたため揃って海に身を投げるのだ。
一命を取り留めるも、離れ離れになってしまった2人。ナタリーはフランシスのことを忘れられず、その後も数年に渡り彼を想い続ける。一方のフランシスは記憶喪失となり、別の女性と結婚していた。
しかしある情報を手にしたナタリーはフランシスの居場所を突き止め、雨の降る海岸沿いで彼を見つける。ナタリーの姿を見たフランシスは一気に記憶が戻り、そのまま吸い寄せられるように抱き合う……。ところが、次ページを開いた瞬間、2人の前に迫るバスが! フランシスはそのバスに轢かれてしまい、やっと出会えた2人は再び絶望の底に叩き落とされるのであった。
筆者はこの事故のページを見た瞬間、「せっかく会えたのに!!」と、思わず叫んでしまった。この事故により、フランシスはまもなく命を落としてしまう。そこから1人残されたナタリーには、これぞ“一条ワールド”とも言えるような波乱万丈の展開が待ち受けている。