■「もう心配かけないから…」そう言ったのに待ち受ける大事故『ホットロード』
紡木たく氏による『ホットロード』は、『別冊マーガレット』(集英社)にて1985年から連載が開始された作品だ。
主人公の宮市和希は母親と衝突を重ねる14歳の少女。自分の生き方に悩む和希の前に現れたのが、暴走族メンバーである春山洋志だ。2人はふざけながら、ときには真剣に悩みながらお互いを思いやり、静かに愛を育んでいく。
春山は当初暴走族メンバーの1人だったが、物語後半にはリーダーになっている。終わらない暴走族同士の抗争や、命をかけた暴走行為に気が気ではない和希。
ある日発熱した春山は子猫を抱きながらつぶやく。“あのお姉ちゃん帰ってきたら言っといて。これ終わったらもう心配かけねぇからって”、と。そして春山は和希のいない間にバイクに乗って抗争へと向かい、大型トラックにはねられてしまうのだ。
暴走族をテーマにした作品とあって、事故のシーンが多い作品だ。しかし春山がやっと真っ当な道へと歩き出そうとする展開になったところで生死をさまよう事故に遭ってしまうのは、なんとも切なく衝撃的だった。
今回紹介した漫画の時代は、まだ交通整備やルールも不十分であり、暴走行為や飲酒運転をする若者も多かった。実際に交通事故や列車事故に巻き込まれた人も少なくなく、ある意味、リアリティのある展開と言えるだろう。
しかしいつの時代も、事故が起きると本人はもちろん、残された人も大きな悲しみを背負ってしまう。漫画のような悲しい展開にならないためにも、普段から注意していきたいものだ。