■妹への強い想いと寂しさから虚となってしまった『BLEACH』の井上昊

 次は、2001年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった久保帯人氏の漫画『BLEACH』で描かれた、同作のヒロイン・井上織姫と兄・井上昊の悲しい運命を見ていこう。

 15歳離れている織姫と昊は、DVをする両親の元に生まれる。昊は自身が18歳になった時に織姫を連れて家を出て一人で懸命に彼女を育てた。しかし、織姫が中学の頃、昊は事故で命を落としてしまう。

 この時点でかなり辛い出来事なのだが、織姫と昊は事故の直前に、いじめで髪を切られた織姫に昊がタイミング悪くヘアピンをプレゼントしたことが原因で喧嘩をして、きちんと話もできないまま永遠の別れを迎えていた。

 織姫への未練を残していた昊は、現世に留まる霊となる。だが、毎日祈りを捧げてくれていた織姫が周囲の仲間のおかげで前を向きはじめると、自分に対する想いが薄れたと感じ、寂しさに飲み込まれ虚化してしまう。

 虚となった昊は最愛の人である織姫を求めて暴れ始め、ついには彼女を襲撃する。これまでの寂しさを織姫にぶつけるが、「お兄ちゃんはこんなことする人じゃなかったのに…!」という言葉を聞いて「俺をこんなにしたのはお前だろ!殺してやる!」と怒ってしまう。

 織姫は、「俺のために生きてくれないならせめて俺のために死ぬべきだ」と愛と憎しみを向ける昊の攻撃を受け止め、祈りを捧げなかったのは心配をかけないよう、幸せであることを知らせたかったからだと告げる。織姫の言葉で正気を取り戻した昊は、このまま消えておきたいと自ら斬魄刀を刺し成仏した。

 喧嘩をして朝の挨拶もしないまま別れたことを悔いていた織姫は、尸魂界に送られる直前の昊に「いってらっしゃい」と笑顔を見せる。この織姫の言葉で、人間だった頃の優しい笑顔を取り戻した昊はなんとも悲しく切なく、涙なしでは見られない名シーンだった。

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