ファミコンには、タイトルだけではどんな内容なのかが分からず、ただただ想像するしかなかったゲームがあった。インターネットもない当時は情報収集をすること自体が難しかったので、買ってみて初めてゲーム内容を知ることができたものである。
今回は、ファミコン時代に「はたしてどんなゲームなのか?」と想像力をかき立てられたタイトルのソフトを振り返ってみよう。
■“朝までファミコン”って…? ファミコン末期に作られたアドベンチャーゲーム『舛添要一 朝までファミコン』
どこかで聞いたことがあるようなタイトル……それが、ココナッツジャパンから1992年に発売された『舛添要一 朝までファミコン』だ。
本作は当時、国際政治学者として討論番組などに出演していた舛添要一さんが監修を務めたアドベンチャーゲームである。舛添さんは1980年代後半からテレビ朝日系列の『朝まで生テレビ』などに出演していたため、そんなゲームなのかと、つい内容を連想してしまう。
だが、実際のゲーム内容は全然違った。四章立てのアドベンチャーゲームで、プレイヤーは営業部の課長としてプロジェクトの責任者となり、派閥にも巻き込まれながら会社のために奔走していく。主人公は接待や土地買収など、実際の営業マン同様に飛び回っていき、各章をクリアするとビジネスマンに向けたクイズ問題が20問出題される。
いってみればビジネスマン向けのゲームで、決して「討論」ではない。だからこそ、「タイトルがなぜこれなの?」と、疑問がわいてしまう。
しかも、なんと主人公は舛添さんではない。舛添さんは基本ゲームの語り部であり、時には劇中の人物としても登場する。
そういえば、このゲームは漢字が使われていたので、ある程度の年齢であれば読みやすかったが、小学生くらいの子どもたちには振り仮名がないので分かりづらかったかもしれない。当時としてはなかなか勉強になるゲームだっただけに、もっと違うタイトルにすれば分かりやすかったのに……と思ってしまう。
■いろいろもったいなかった…? 実在の野球選手がモデルとなった推理ゲーム『プロ野球?殺人事件!』
次はカプコンから1988年に発売された『プロ野球?殺人事件!』だ。タイトルに「殺人事件」とあるので推理ものだとすぐにわかるが、そこに「プロ野球」が入ることで予想は極めて困難になる。しかも「プロ野球?」と疑問符までついているのだから、タイトルだけでどんなゲームか把握するのはまず無理だろう。
実際のゲームは、濡れ衣を着せられた主人公が警察に追われながら事件を解決していくというアドベンチャーだ。漫画や小説などではよく見る展開だが、当時のファミコンゲームで警察に追われる立場で逃走しながら推理するというのが画期的だった。
登場キャラは実際のプロ野球選手がモデルとなっていて、主人公・いがわすぐるはまぎれもなく江川卓さんだろう。江川さんは発売前年に現役引退しているが、いがわの肩を故障し引退となったというゲーム内での経歴も現実世界と同じだった。
モデルとなっている野球選手や関係者とのやり取りは面白く、ゲームシステムもよくできていたが、もったいない点もあった。逃走資金のためとはいえマップが広すぎて回るのは大変で、いがわがなぜかプロテストを受ける流れも理解しがたい。
また、謎解きのヒントが少なく難易度も高かった。筆者は当時所属していた少年野球チームでのチームメイトと、ヒントの出し合いをしていた。
ちなみに登場人物はみな、今となってはレジェンドばかり。“きおはらかずひろ”と、“くあたますみ”という“KKコンビ”も登場するが、同級生で仲が悪いという設定は「涙のドラフト」を見ていた世代としてはどこかリアルに感じたものだ。