■「東城綾派」か「西野つかさ派」か?

 最後は2002年に連載が開始された河下水希さんの漫画『いちご100%』だ。例に漏れず主人公の「真中淳平」が優柔不断でモテるため、最終的に複数のヒロインが登場するが、同作の初期からメインヒロインとして登場したのが「東城綾」と「西野つかさ」である。

 物語は中学3年生の真中が、校舎の屋上で「いちごパンツ」の美少女と出会ったところから始まる。心を奪われた真中は、屋上に落ちていたノートから、東城に会いにいくが、おさげに眼鏡姿だった東城がいちごパンツの女の子ではないと思い込む。

 真中は友人からそんな美少女なら西野で間違いないとけしかけられて、勢いで西野に告白することになる。そして結果はまさかの成功。真中は西野と交際することになるが、次第に東城にもひかれるようになっていく。

 いちごパンツの女の子の正体である東城は、本来はかなりの美人でスタイルも良い。だが三つ編みに眼鏡という野暮ったい格好をしていたため、学校では地味な存在だった。小説を書いており、映画に携わりたい真中と夢を共有する。

 学校のアイドル的な存在である西野は、金髪のショートカットが特徴の美少女だ。誰に告白されても断ってきたが、懸垂しながら告白してきた真中にひかれて交際することになる。男勝りな性格だが、徐々におしとやかになっていく。真中の心が西野から離れていることを察するなど鋭い一面もある。

 本作は真中がどちらを選ぶのかわからない(展開が読めない)のが特徴の作品だ。そのため読者は大変ドギマギさせられる。未読の人はネタバレなどなしで楽しんでほしい。

 今回紹介した作品の共通点としては黒髪ロングの美少女と、明るい髪でショートカットの美少女が優柔不断な男を巡って恋をする点が挙げられる。だが、似たような枠組みであっても、一人ひとりのキャラクター、作品の魅力は全く違うものだ。

 3作品を比べて読むのも、時代や作家の違いが体感できて面白いだろう。きっと好みのヒロインに出会えるはずだ。

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