■「組んで漫画を仕上げるんなら彼しかいない」

 さて、このほかにも、鳥山さんが以前から親交のあった漫画家と作り上げた合作漫画がある。今回はその貴重な作品を紹介したい。

 もっとも多かったのは桂正和さんとともに発表された作品だろう。『ジャンプスクエア』2008年5月号では原作を鳥山明さんが担当、作画を桂正和さんが担当した漫画『さちえちゃんグー!!』が掲載。同誌の創刊記念読切シリーズとして制作された、53ページの作品だった。

 同作は、忍者の末裔である中学生さちえちゃんが宇宙人・オクト星人と出会い、格闘チャンピオン・ザリドとともにオクト星を救うために旅立つ物語。ギャグあり、宇宙人とのバトルありと、鳥山作品の雰囲気がありながら、さちえちゃんの太ももやヒップのコマが大きくなっていたりと、桂作品ならではの描写もある。

 また、『週刊ヤングジャンプ』2010年1・2合併号では、同誌創刊30周年記念作品として、鳥山明さんが原作を担当し、作画を桂正和さんが担当した合作漫画『JIYAージヤー』が掲載された。同作は、凶悪な吸血鬼・バンパが猛威を振るう地球に、銀河パトロール隊員のジヤがやってくるというSF作品で、鳥山さんの漫画が初めて『ヤンジャン』に掲載された貴重な作品でもある。

 良作ともに、コミックス『桂正和×鳥山明 共作短編集 カツラアキラ』に収録されており、「桂正和×鳥山明プレミアム対談」では「内容がないのが好き」という鳥山さんと、「感動的で人間的なエピソードを入れたい」という桂さんの間で、さまざまなやりとりがあったことが語られている。鳥山さんは「組んで漫画を仕上げるんなら、激論ができて絵のうまい彼しかいない」と桂さんを評価しており、改めて両者の合作が貴重なものであることが分かる対談となっている。

 続いては、『ONE PIECE』の尾田栄一郎さんとの合作漫画である『CROSS EPOCH』。こちらは新たなストーリーやキャラを制作しての合作ではなく、『ドラゴンボール』と『ONE PIECE』のクロスオーバー作品である。

『週刊少年ジャンプ』2007年4・5合併号に目玉企画として掲載されたこの漫画は、どちらも原作とは異なるキャラという設定で、スターシステムをとっている。基本的には『ONE PIECE』の世界観が軸となっており、日本を代表するキャラクター同士がペアを組んで活躍するというワクワクする内容で、まさに夢のコラボといえるだろう。

 なお、アニメではこの後も両作品のコラボはあるが、漫画のコラボはこれが最初で最後。当時の『ジャンプ』を持っている人にとってはまさしくお宝となっただろう。

 尾田さんはかねてより鳥山さんの影響を受けていると公言しており、訃報を受けた際にも「その存在は、大樹です」「僕らは血液レベルで鳥山先生が大好きだから」と、その存在の大きさと喪失感を明かしていた。

 一方で、鳥山さんと16年以上にわたって交流があったというお笑いコンビ・チキンナンバンの大川知英さんは、3月10日放送の『サンデージャポン』(TBS系)に出演した際、鳥山さんが尾田さんの絵を絶賛し「尾田栄一郎さんは絵がうまい。丁寧なんだよね」と語っていたと明かしていた。双方がお互いを敬ういい関係だったことがうかがえるエピソードだ。

 世に出してきた作品が世界中に多大な影響を与えてきた鳥山さん。これからも彼の作品に影響を受けた漫画家や読者が、その感動を胸に新たな世界を作り上げていくことだろう。

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