■愛のために奔走する悲しき悪役…『スカイハイ』

 2001年から『週刊ヤングジャンプ』及び『週刊ヤングジャンプ増刊 漫革』(集英社)で連載された髙橋ツトムさんの『スカイハイ』は、死後の世界の人々にスポットを当てた物語が展開される、オムニバス作品だ。

 2003年からは各エピソードを実写化したテレビドラマが放送され、主演の釈由美子さんをはじめ、豪華な俳優陣が出演。同年制作された劇場版のなかで、科学者の男性・工藤達也を大沢さんが演じることとなった。

 工藤達也は大金持ちの天才科学者でありながら、不治の病に侵された妻を救うため、“悪魔”と契約を結ぼうとする非常に危険な思想の持ち主。“悪魔”を復活させるためには生贄を用意する必要があり、そのために彼は若い女性を次々と手にかけていく。

 いわゆる“悪役”のポジションにあたる人物であり、普段、優しい役柄を演じるイメージの強い大沢さんとはかなりギャップが大きいキャラクターだった。

 作中、大沢さんの演じる工藤はスーツを着こなしたスタイリッシュな立ち振る舞いを見せつけており、ときにはサングラスに黒コートを身に纏った“これぞ悪役”というスタイルも披露している。

 さらに随所に挟み込まれる“殺陣”のシーンも見どころの一つで、肉体を駆使した格闘戦はもちろん、主演の釈さんと繰り広げる刀を使ったバトルシーンは必見だ。

 登場するたびに工藤の表情や姿も冷徹に、より妖しく変化していくことで、彼の心が“悪魔”に支配され変貌していくことを巧みに表現している。

 また、悪役でありながら一方ですべての行動が“愛する妻を救う”という一点に終始している点も彼の大きな魅力の一つで、間違った“愛”に突き進む工藤の姿を大沢さんはクールに、ときに激しく熱演していた。

 普段とは一味違った、大沢さんの妖艶な魅力を存分に堪能できる実写映画作品だ。

 

 大将軍に脳外科医に科学者と、作品ごとにまったく違う顔の演技を見せるのも、大沢さんの大きな魅力の一つだろう。ストイックな姿勢で役を自身に“降ろす”その活躍は、まさに作品におけるヒットの立役者といえるかもしれない。

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