■当時のトレンドだった耳長エルフ

『コンプティーク』で『ロードス島戦記』が始まった1986年といえば、ファミコンで『ドラゴンクエスト』第1作目が発売された年。同作で初めて西洋ファンタジーに触れたというユーザーは多いと思うが、『ドラクエ』にあったのはあくまで簡易な世界観。種族の概念、特に外見的特徴まで含めた本格的な世界観を熟知する人は、当時はマニアックな位置付けにあったPCゲーム愛好家が中心で、一般にはあまりいなかったと言っていい。

 そのため『ロードス島戦記』でファンタジー世界に目覚めた人には細長い耳のエルフが植え付けられたわけで、小説化もされた同作の人気に影響を受けた漫画やイラストなどではディードリットのような耳のエルフが多く描かれるようになったという経緯がある。

 当時はファンタジーのトレンドだったこの細長い耳のエルフだが、最近では逆にあまり見なくなったかもしれない。近いところでは、『ゴブリンスレイヤー』の妖精弓手に名残りが見えるようなものだ。これは日本にも本格ファンタジーが広く浸透し、原典のエルフが周知されたことによるものだろう。

 ただ、亜流か本流かはまた別の議論として、ディードリットをはじめとする出渕氏が描く『ロードス島戦記』のキャラクターイラストは、どれもとても魅力的だった。個人的な感想だけでいうのなら、作品の面白さはもちろんあったにせよ、出渕氏のキャラクターがなかったら『ロードス島戦記』があそこまで爆発的な支持を得るまでには至らなかったのではないかと思うほどだ。

 なお、最後にかなり余談になるが、SFにも造詣が深いマルチクリエイターの出渕氏はメカニックデザインでも引っ張りだこ。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でのサザビーやνガンダム、『機動警察パトレイバー』など数々のヒット作で登場メカを担当している。

 そして、2024年1月クールでは、『ラーゼフォン』以来19年ぶりにボンズとタッグを組んだオリジナルアニメ『メタリックルージュ』で総監修を務めているということも伝えておきたいところだ。

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