『機動戦士ガンダム』との関係も?『葬送のフリーレン』『ダンジョン飯』でも注目「エルフの耳」のルーツを辿るの画像
『葬送のフリーレン』(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 現在放送中のテレビアニメ『葬送のフリーレン』と『ダンジョン飯』。この2作のアニメ化が発表された際、「エルフの耳」がネットでちょっとした論争になっていた。エルフの耳はなぜ尖っているのか? エルフの耳は細長くはなかったか? ……などなど、案外知らない人もいる、これらの「エルフの耳」のルーツを解説していきたい。

■1000年を超えて生きる森の妖精エルフ

 まず、おさらいとしてエルフがどういった存在なのか、から。彼らは「森人」「森の妖精」と呼ばれる妖精族だ。

 森の中で暮らし、自然との調和を種族全体の意思としているため、村や町で暮らす人族(ヒューマン)とは距離を置いている。特に鉄を嫌うため、鍛冶屋を生業にする山の妖精ドワーフとは犬猿の仲で知られている。自然とともにある生き方をしているため、多くのエルフはとても保守的で、多種族との交流は極端に少ないと言われている。そして「森の狩人」とも呼ばれている通り、弓の名手。魔法や精霊魔法の優れた使い手でもある。

 そうした特徴のほか、人との一番の違いはとても長命な種族であることだ。1000歳を超えるのことも珍しくなく、長寿な者だと2000歳を超え、中には3000歳に及ぶ者もいるともいう。このことからエルフは「悠久の時を生きる種族」とも言われている。

 エルフがどのように空想されたのかは諸説あるが、一般的には北欧神話に登場する妖精が起源にあるとされている。それがヨーロッパのさまざまな民話や創作物へと姿形を変え、日本に輸入された現代のファンタジーに登場するエルフは、イギリスの作家J・R・R・トールキンによる小説『指輪物語』(1954年)がルーツだと言われている。

 文献によって差異はあるが、もともと伝わっていたエルフの解説は大方このようなものだ。『葬送のフリーレン』のフリーレン、『ダンジョン飯』のマルシルがドワーフに鷹揚であったりするように、あとは作品観の違いやキャラクター性によるものといったところか。

 それでは肝心の、冒頭で挙げた「エルフの耳」についてだ。なぜエルフの耳は先が尖って描かれるのか?

■尖り耳の原典は? 細長い耳は日本生まれのビジュアルだった

 いつから、ということで言うと諸説あるため明確には断言できないが、ファンタジー作品で広くそう描かれるきっかけになったのは、1974年に発売されたアメリカのテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』からという説が強い。

 一方で、そもそもヨーロッパではエルフに限らず妖精自体が耳の尖った種族として伝えられていることが多く、絵本などでは小人、小鬼などもエルフと同じように尖り耳になっているものをよく見つけることができる。“大人になりたがらない少年”で有名な『ピーター・パン』でも、主人公のピーターを妖精と捉えた作品では尖り耳で描かれている。

 そうしたところで言うと『葬送のフリーレン』のフリーレンや『異世界おじさん』のツンデレエルフ、『最果てのパラディン』のメネルドール(彼はハーフエルフだが)といった最近放送されたファンタジーアニメのエルフたちは、ルーツに忠実な外見で描かれていると言えるだろう。

 ではもう1つの、エルフの耳は“細長い”はどうだろう? これは歴史が古いゆえに絶対的な原典作品を見つけるのが難しい“尖り耳”と違い、発祥は明確だ。しかも、新しい。

 日本に西洋ファンタジーが入ってきてまだ間もなかった1986年に、PCゲーム雑誌『コンプティーク』にて、『D&D』を誌上リプレイした『ロードス島戦記』という連載が始まった。そこで挿絵を担当した出渕裕氏が、ヒロインのエルフ「ディードリット」をロバの耳のようにピンと細長く描いたのが始まりになっている。

 つまり、細長い耳はもともとのエルフにはなく、日本で生まれた出渕氏によるオリジナルビジュアルなわけだ。

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