ヤンキー漫画といえば、独特の「ツッパリヘア」を思い浮かべる人は多いだろう。目立てば目立つほど、ヤンキーとしての箔が付く彼らの髪型。現在大ヒット放送中のTBS系ドラマ『不適切にもほどがある!』でも、徐々にヤンキースタイルに染まっていくキヨシ(坂元愛登さん)が、『週刊少年チャンピオン』のヤンキー漫画『Let’sダチ公』を読みふけるシーンがあったりと、漫画とヤンキーの関係は昭和時代は特に根深かったとも言える。
当時から現代まで、ヤンキー漫画の実写化企画は数多くあったが、やはりビジュアルの再現という点はどうしても期待してしまうもの。奇抜なヤンキーヘアは漫画の中だからこそ自由に表現できるが、現実になるとなかなか難しい。そこで今回は、実写化映画や実写化ドラマで、見事なヤンキーヘアを披露し漫画キャラを再現した俳優たちを振り返りたい。
■突き抜けたヘアスタイルで話題になった『今日から俺は!!』
1988年から『少年サンデー増刊号』で連載が始まり、1997年まで『週刊少年サンデー』で連載された西森博之さんのヤンキー漫画『今日から俺は!!』は、まず1993年にVシネマとして実写版が制作され、東映Vシネマシリーズとして5本、劇場映画版が1本作られた。
同シリーズで主人公の三橋貴志を演じたのは、今作で役名を芸名にした新人俳優の三橋貴志さんで、相棒・伊藤真司役の中倉健太郎さんも今作でデビュー。伊藤は長い髪を逆立てた「ツンツン頭」がトレードマークだが、同シリーズ初代&2作目の伊藤は“ショートツンツン”だった。しかし、3作目からは超ロングにリニューアル。髪をおでこのラインから横一直線にわけているため、分け目がくっきりしていたり前髪がふわふわしていたりはするが、概ね原作に寄せていた。
そして、日本テレビ系列で2018年にスタートした賀来賢人さんと伊藤健太郎さんによる実写ドラマシリーズは、さらに原作に近いビジュアルになっていた。特に、伊藤役を演じた伊藤さんは前髪をがっちり固め、頭部全体から髪の毛を立ち上げた“超ロングツンツン”をリアルに再現していた。
このヘアスタイルは地毛で作られているのだが、番組公式TikTokには、伊藤の「ツンツン頭製造動画」もアップ。コテで伸ばしながら髪の根元を大量のピンで固定して、毛一本一本を丁寧に逆立てていく様子に「地毛??!!」「ズラかと思ってた~!」といった声が寄せられていた。たしかに、ケンカをしても走っても潰れない固さは、見事の一言だ。確実に髪が痛むであろうこの工程を撮影のたびにしていたとは、伊藤さんの役者魂に脱帽である。
さらに同作では、女性キャラも負けていなかった。作中では、原作連載時に大流行していた“松田聖子カット”を赤坂理子役の清野菜名さんが、“中森明菜カット”を早川京子役の橋本環奈さんが完全再現。クリクリの外巻きにレイヤーカット、丸いシルエットなど、昭和を感じる彼女らの姿に懐かしさを覚えた視聴者も多いだろう。
■ボリューム満点のリーゼントに注目!『湘南爆走族』
昭和のヤンキー漫画では、吉田聡さんの漫画『湘南爆走族』も、実写版の再現度が高かった作品だ。湘南に住む暴走族の抗争やケンカ、バイク、友情、そして恋を、ギャグとシリアスをバランスよく交えながら描いた同作は、今なお根強いファンを抱えている。
実写化されたのは1987年公開の同名映画。『湘南爆走族』の登場人物はボリューム感のある、通称スーパーリーゼントが印象的だが、同作では俳優たちが地毛を使って原作に忠実に、ふわふわのスーパーリーゼントを作り上げていた。
主人公である江口洋助役を務めたのは、偶然にも本名が同じ読み方である俳優・江口洋介さんで、同作が映画初主演作品。江口のリーゼントは、紫のカラーリングがトレードマーク。江口さんは原作に寄せるため、3か月間にわたって地毛を紫に染めて撮影に挑んでいる。漫画から抽出したかのような鮮やかな紫色の頭は、視聴者に強いインパクトを残した。
親衛隊長・石川晃を演じたのは当時19歳の織田裕二さん。石川のファンだったという織田さんはオーディションに参加して石川役を勝ち取り、同作で俳優デビューを果たした。作中では、若手らしいフレッシュさを出しつつ、石川のギラギラした目を見事に再現し強い存在感を放っている。
石川のリーゼントといえば、トップの黒髪、ソリコミの赤メッシュ、ボトムの金髪という3色ミックスが特徴的。織田さんは発色のいい3色で髪を染め上げ、忠実に石川の外見を落とし込んだ。カラフルなヘアスタイルの実写化は違和感を覚えやすく難しい挑戦だが、江口さん、織田さんは成功した好例と言えるだろう。