■作中にヒントがあった「聖地・所沢」
有名な話ではあるが、『となりのトトロ』の世界は、実際にある場所と架空の場所が入り混じっている。現実世界での「聖地」とされているのは、宮崎監督の居住地でもある埼玉県所沢市だ。
宮崎監督が所沢への思いを語るインタビューも収録された書籍『トトロの生まれたところ』の中で、鈴木敏夫さんは初期段階のタイトルが「所沢にいるとなりのおばけ」だったことを明かしている。そこからテコ入れされ、最終的に『となりのトトロ』で決まったそうだ。
トトロの住む森のモデルとなったのは、東京都と埼玉県に跨る3500haの広大な「狭山丘陵」である。これは劇中での描写にも反映されており、サツキらの引っ越しを手伝うおばあちゃんの後ろに「狭山茶」と書かれた箱が置かれている場面がある。
現在の「狭山丘陵」は「トトロの森」と名付けて保護されており、近くには大きなトトロが迎えてくれる「クロスケの家」などもある。聖地巡礼しながら森林散策をするのに、ぴったりな場所だろう。
サツキらが住んでいた「松郷」もまた、所沢市に実際にある土地名である。ただ、こちらはもう整備されていてサツキらの街の面影はない。
■隠れトトロを探せ!他作品にたびたび登場するトトロ
ジブリ作品では、作品の垣根を超えて別作品のキャラを紛れ込ませる例が多く見られる。中でも、トトロは登場回数が多いキャラの一つだ。ここでは、見つけたときにテンションが上がる「隠れトトロ」を紹介していく。
まず、『耳をすませば』ではバロンが自分を作った少年の回想をしている場面で、作業台の片隅に中トトロと小トトロの人形が置かれていた。『魔女の宅急便』でも、旅立ちを決めたキキと父がキキの寝室で会話をする冒頭シーンで、ベッドの上にトトロがいる。
『崖の上のポニョ』では、リサが冷蔵庫からビールを取り出す際に、冷蔵庫の壁に小トトロのキーホルダーがかかっていた。最もわかりやすいのは、『平成狸合戦ぽんぽこ』の百鬼夜行の中に登場した駒に乗って叫ぶトトロだろう。このシーンには他にも様々なジブリキャラがいた。
ジブリ以外では、宮崎監督に感銘受けたというジョン・ラセター監督のたっての願いで、『トイ・ストーリー3』にボニーのおもちゃとしてトトロが出演した。同監督が総指揮を務めた『ズートピア』でも、ゾウのアイス屋のシーンで後ろの棚にトトロが置かれている。
■メイとサツキに影がない? 公式がきちんと否定した都市伝説の真実
トトロの有名な都市伝説の一つに、「メイとサツキの影がない、もしくは後半になるにつれ影が薄くなっていく=二人は死んでいる」というものがある。さらには、トトロが死神でサツキらを迎えに来ている……といった説も持ち上がり、スタジオジブリに問い合わせが寄せられる事態があったそうだ。
しかし、スタジオジブリ広報部は2007年5月にブログの「ジブリ日記」を通じて、「みなさん、ご心配なく。トトロが死神だとか、メイちゃんは死んでるという事実や設定は、『となりのトトロ』には全くありませんよ」「都市伝説のひとつです」と全面的に否定している。続けて、影がない描写については「作画上で不要と判断して略しているだけなんです」と説明していた。
ほかにも、「迷子になったメイの後ろにあるお地蔵様に“メイ”と刻まれている」という都市伝説があるが、これはネットで出回った偽情報で作中にそういった場面はない。劇場だけでなく、DVDやテレビ放送で何回、何十回と見てもそのたびに新たな発見や気づきがあるスタジオジブリ作品。その世界の奥深さゆえ、こうした都市伝説も生まれてしまうのかもしれない。
公開から35年以上たっても変わらず愛されている『となりのトトロ』。今回紹介した小ネタを踏まえてまたまた再視聴するのも楽しいだろう。