■あの手この手で迫る計算式に挑め!『けいさんゲーム』

 “算数”といえば学年を重ねるごとにだんだんと難易度も上がっていくことから、学習するうえで苦労した経験を持つ人も多いのではないだろうか。

 そんな“算数”を学年ごとのレベルに合わせ、より楽しくテンポ良く遊べるように考えられたのが、1986年に東京書籍から発売された『けいさんゲーム』である。

 本作はなんと1年、2年、3年、4年、5・6年と5パターンのソフトが発売されており、プレイヤーの学年に応じた問題に挑戦できるように配慮されている。

 ゲーム内容はいたってシンプルで、繰り出される計算問題をひたすらスピーディーに解いていくというもの。しかし、学年ごとに答えを選択する方法に工夫が凝らされており、1年ならば“正解の数字にカートでぶつかるレースゲーム”や、“敵に当たらないように正解を選ぶ虫歯治療ゲーム”といった構成となっている。

 かけ算やわり算が登場する3年では、“潜水艦を操作し、落ちてくる地雷をかわしながら正解を答える”、“敵を避けつつ、答えを導き出しながらビルを脱出する”……など、問題の難易度もさることながら、その操作性も徐々に難しくなってくるのであなどれない。

 高学年では“小数点”が解禁されるのに合わせ、ゲーム内容も本格派シューティングゲームになったりと、学習ゲームでありながらかなりの難易度を誇っている。

 小学生はもちろん、高学年用のソフトは大人でも一発でクリアするのは難しい。完全制覇するためには失敗を繰り返しながら、問題に立ち向かっていく必要があるだろう。

 まさにファミコン版の“脳トレ”とも呼べる存在だ。ゲームを通じて自然と計算の反復練習ができるのは、当時ではなかなか斬新な試みだったのではないだろうか。

 

 ゲームと言えばいわゆる“娯楽”としての側面が強いのだが、ファミコンの時代から“勉強”のために開発されたソフトが存在していたことに驚かされてしまう。

 画期的である一方、ゲームでも“勉強”をしなければいけないという点においては、当時の子どもたちからするとちょっと悲しかったかもしれない。

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