■決して埋まることのない“貴族”と“平民”の格差…『ファイナルファンタジータクティクス』
1997年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)より発売されたPS用ソフト『ファイナルファンタジータクティクス』も、前述の『タクティクスオウガ』同様、“クォータービュー方式”で展開されるシミュレーションRPGだ。
国民的人気を誇るRPG『ファイナルファンタジー』シリーズの外伝で、作中には同シリーズではお馴染みのモンスターや魔法、単語が数多く登場する。
プレイヤーは「獅子戦争」と呼ばれる大国内での紛争を渡り歩きながら、各地で繰り広げられる戦い、貧富の差、身分による差別といった社会問題の数々を目の当たりにしていく。
とくにその“身分”にまつわる強烈な事件が起こるのが、第一章を締めくくる“ジークデン砦”での戦いだ。
主人公・ラムザたちは貴族へのクーデターを目論む「骸旅団」を追い詰めていくが、その間、親友・ディリータの妹であるティータが連れ去られ、人質になってしまう。
現場に急行するラムザらだったが、彼らを待っていたのはティータを盾にして抵抗する旅団の副団長・ゴラグロスと、それに対峙するベオルブ家の次兄・ザルバッグだった。
なんとザルバッグは躊躇することなく、ティータを射抜かせる。そのあまりにも無慈悲な一矢により、ラムザ、ディリータの目の前でティータは死亡してしまうのだ。
これはラムザの兄・ザルバッグたちにとって、ティータが“平民”の出身であり、その命を軽んじた結果起こってしまった事件でもある。実の妹を殺害されたディリータはもちろん、ラムザもまた兄が人の命を容赦なく踏みにじった姿を見て、“貴族”の在り方に疑問を持つようになってしまう。
ラムザ、ディリータが袂を分かつきっかけにもなった、まさに本作の“始まり”ともなった凶行である。
シミュレーションRPGはその性質上、大規模な“戦争”がテーマとなっていることも多く、それゆえに苛烈で陰鬱なイベントも多い。人の命や尊厳を踏みにじる悪役たちの凶行は、“戦争”がもたらす痛々しい現実をプレイヤーにこれでもかと痛感させてくれる。