劇場での公開時だけでなく、その後、DVDやテレビ放送などで見返すたびに新たな感動を与えてくれるジブリ映画。しかし何度見ても「気づかなかったシーン」というのはあるもので、設定資料集やスタッフのインタビューなどで、その裏話を聞くと、ついつい誰かに自慢したくなってしまうもの。
そこで、今回注目するのは宮崎駿監督初の完全オリジナル作品であり、スタジオジブリ設立後の初作品でもある『天空の城ラピュタ』。1986年の公開以来、日本を代表する長編アニメとして愛され続けている作品だ。そんな『天空の城ラピュタ』に秘められたトリビア、明日誰かに話したくなる小ネタをいくつか紹介していきたい。
■若い頃は美人!ドーラの過去と一家の秘密
まずは、『天空の城ラピュタ』の中でも人気が高い空中海賊のドーラ一家のトリビアから。1986年発売の雑誌『アニメージュ』で、ボスであるマ=ドーラは宮崎監督の思い入れが強いキャラで、モデルは自身の母親だということが明かされていた。
ドーラには、「シャルル」「ルイ」「アンリ」というフランス国王の名がついた3人の息子がいる。宮崎監督はビジュアルブック『the art of Laputa』のインタビューで「ルイはドーラがスペインあたりのイイ男と恋仲になって出来た子などとバカなことを考えて描いた」と裏設定を明かしており、シャルルについては、ウェールズに行ったときに見かけた大男のガードマンをモデルにしたことも語られている。ちなみに長男のシャルルは、街で親方と力比べをしてシャツを筋肉で吹き飛ばしたヒゲの男だ。
ドーラ一家には3人の息子の他、5人の子分がおり、小説版で名前が「カ」「キ」「ク」「ケ」「コ」だと判明。それぞれ国籍が違っており、シータの料理を手伝うときにすり鉢を持っていた男「ケ」が日本人だそう。
また、ドーラはシータに対して「私の若い頃にそっくりだよ」と懐かしんでいるが、タイガーモス内でシータの洋服を探している際、背景の壁に若かりし頃の肖像画がこっそり飾られている。シータと同じおさげ頭で、気が強そうな美人だ。これも言われてみないと気づかないトリビアだろう。
■モールス信号は「隠しメッセージ」だった
作中では、4回モールス信号が発信されている。1回目は、シータ輸送中の船の中でムスカが打った「VVV」という試験信号で、通常はこの後にメッセージを打つのだが、ムスカはシータに殴られて気絶してしまった。2〜4回目は、パズーが彼の家を襲撃してきたドーラ一家に捕まった場面で受信したものだ。
まず、ドーラがゴリアテから傍受した信号が「Fidelity(忠実性)」、その直後、ゴリアテに映像が変わった際に発信されていた信号は「Manufacture(制作・製造)」。場面がドーラに戻り、ゴリアテの動きに警戒を持ったときに受信していたのが「Studio(スタジオ)」だ。
繋げると「忠実な制作スタジオ」となり、スタジオジブリのことを暗に意味していることがわかる。さらに、このときドーラが持っていた暗号解析ノートの表紙は、そのままズバリ「ANGO(暗号)」。制作者のちょっとした遊び心に、ワクワクしてしまうトリビアだ。