おもに男子たちに人気だったファミコンとは違い、多くの小学生少女たちも気軽に楽しんでいたゲームボーイ。1999年9月にリリースされ、2024年で25周年を迎えるゲームボーイ用ソフト『きせかえ物語』はまさにそんな層を狙って作られたタイトルで、「おしゃれがしたい」「恋愛にも興味がある」「キラキラした世界観が好き」「子どもでは体験できないことをしてみたい」という少女たちの希望をすべて詰め込んだ「元祖乙女ゲーム」とも言える名作だ。
ストーリー自体はとてもシンプルで、修行中の魔女っ子のマリちゃんが白猫のミミとともに1年間だけ人間界でファッションの勉強をするというもの。
シミュレーションゲームであり、自分の選択で登場人物との間にイベントを起こしたり好みの洋服を作ったりと、没入感も申し分なしだった。今回は、そんな元祖『きせかえ物語』の魅力について語っていこうと思う。
■今見てもおしゃれな豊富なファッション
本作のメインは「きせかえ」であり、洋服のバリエーションやコーディネートの自由さが何よりのウリ。プレイヤーの行動によって能力値を上げたり、特定の店に足を運んだり、誰かとデートをすることで新たな洋服のデザインを思いつくというシステム。主人公が作れる洋服は、カジュアル系やストリート系やセクシー系までを季節にあわせて194種類も用意されていて、いずれもハイセンスで見ているだけでも楽しく、令和の時代でも通用するようなデザインも多かったように思う。
もちろん中には街中で着れないようなデザインの洋服もあるが、誰と会うか、どこにいくかで自分好みの服を組み合わせたおしゃれが楽しめるというのは、子ども心にファッションセンスを刺激された。
■どこに行って何を食べてどんなアルバイトをする?行動も自由自在
ゲーム内のマップ内には、ファミレス、飲食店やカラオケ、洋服屋に本屋に配送センターといったショップがあり、どこに入るかも自由に決められる。飲食店では、ハンバーガーやパフェ、焼き魚にラーメンといったメニューから好きなものをチョイスできるが、食べたものによって「知力」「やさしさ」「体力」などのバロメーターがプラスされるシステム。ハンバーガー屋やファミレスでご飯を食べると、なぜか「ユーモア」の数値が上がる。
開店時間は店によって違い、中には夜だけオープンして入場料を支払わないと入れないという大人っぽい「ファッションハウス」などもあった。ちなみに、この施設では自身のセンスで服を選び優勝すると賞金がもらえる。
小中学生のプレイヤーにはまだできないアルバイトが体験できるのも、楽しいポイントだったのかもしれない。バイト先は飲食店・ファンシーショップ・配送業者などで、お金が貯まったりスキルが上がったりする。
ただ、学校に通っていないので、バイトを始めると自動的に月曜から金曜までシフトが入ってしまう。しかも、朝になると誘導されるためサボることは許されず、一度始めると一定期間は辞めることもできないというなかなかにシビアな設定だった。ゲームの中でバイトを頑張ることで、スキルが上がるだけでなく継続力も養われる……かもしれない。