■「おまえもかアラン…!!」オスカルを巡っての戦い『ベルサイユのばら』
池田理代子氏の『ベルサイユのばら』は、1972年に『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』集英社)で連載された作品だ。
主人公のオスカルは男装の麗人、彼女を支える幼馴染のアンドレは幼いころからオスカルに恋心を抱いてきた。
しかしのちにオスカルの部下となるフランス衛兵隊のアランも、オスカルを好きになる。当初アランはオスカルに対し反抗的な部下だったが、敬愛を抱くようになってからはアンドレにとってライバル的な存在に。
アンドレとアランは出会った当初から犬猿の仲だったが、喧嘩の原因には必ずオスカルが絡んでいた。オスカルの悪口を言ったアランに腹を立て、アンドレが殴りかかったり、彼女への想いを“身分違いの恋”だとからかわれたアンドレが、怒りのあまり銃を空にぶっ放したことも。
さらにある日、貴族に対する怒りをあらわにしたアランは、勢いで議会に乗り込んでいく。それを止めたオスカルに対し、想いを抑えきれなくなったアランは無理やりキスをする。そんなアランの手をねじりあげ、殴りかかったのはやはりアンドレだ。しかし何もかもあきらめたアランの表情を見て、手が止まる。身分違いの恋に苦しむのは自分だけではないと察し、「おまえもかアラン…!!」と苦しむのであった。
アンドレとアランは、その後徐々に友情を育んでいく。殴りあったあとに男同士の固い友情が結ばれるのも、昭和の少女漫画によく見られる感動的な展開だった。
1人の女を巡って戦う男たち。女性にとっては羨ましい展開とも言えるが、現実にそのようなことが起きたら事件になって大変かもしれない……。残念ながらリアルの世界で「私のために争わないで!」というセリフは、そうそう言うことはないだろう。ヒロインになりきり、漫画の世界でたっぷり楽しむのもまた醍醐味だろう。