『ときめきトゥナイト』に『ベルサイユのばら』にも…昔の少女漫画によくあった“ヒロインをめぐって争う男たちの戦いシーン”の画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第8巻(フェアベル)

 1982年にヒットした河合奈保子さんによる「けんかをやめて」という曲をご存じだろうか。1人の女性を巡って男同士が争い、その様子を見て“もうやめて”と懇願する女性の姿を描いた、ちょっとびっくりするような歌詞も話題になった曲だ。

 現実にはなかなかありえないシチュエーションだが、この曲が流行ったころの昭和の少女漫画には、このようなシーンがよく登場したもの。そこで今回は、昔の少女漫画によくあった、ヒロインをめぐって争う男たちの戦いを紹介しよう。

■まさに「けんかをやめて」そのもの!! 蘭世を巡ってのイケメン対決『ときめきトゥナイト』

 池野恋氏の『ときめきトゥナイト』は、1982年から『りぼん』(集英社)で連載された作品だ。

 主人公の江藤蘭世は、おちゃめな魔界人の女の子。彼女は同級生の真壁俊を一途に想っているのだが、なにしろ彼女はモテるので男同士の争いも起きる。

 なかでも蘭世を巡って俊とバチバチと戦ったのが、ルーマニアのマフィアボスであるダーク=カルロだ。魔界の王子の子孫であるカルロは蘭世に運命を感じ、強引なプロポーズをして、俊から奪おうとする。

 ルーマニア人であるカルロと俊は、出会った当初言葉が通じない。カルロは「ことばがつうじないなら 体でわからせるしかないな…」と俊を威嚇し、彼もそれに応じて殴り合いに発展するのであった。

 このとき蘭世は「おねがいやめて」「わたしなんかのために そんなことしないで」と俊に懇願している。さらに2人の決闘中、蘭世は両手で頬を抱え“ああどうしよう”と困る様子を見せていた。

 このシチュエーションは、まさに冒頭で紹介した「けんかをやめて」の歌詞そのものだろう。歌詞に登場する女性のように蘭世は男性たちを“もてあそんだ”わけではないが、どちらにせよ魅力的な罪な女と言えるだろう。

■睨み合いで戦い、最後は一発お見舞い!『はいからさんが通る』

 大和和紀氏の代表作品である『はいからさんが通る』は、1975年から77年にかけて『週刊少女フレンド』(講談社)で連載された作品だ。

 おてんば娘の主人公・花村紅緒には伊集院忍というフィアンセがいた。紆余曲折を経て気持ちの通じ合った2人だが、忍はシベリア出兵へ。そして記憶を失くし、日本に帰国したときにはすでに妻がいた。

 ショックを受ける紅緒を支えたのが、彼女が勤める出版社の上司・青江冬星だ。心身ともに支えてくれる冬星に応えたいと思った紅緒は、彼との結婚を決める。

 その後、記憶が戻ってきた忍は、紅緒の結婚相手である冬星に激しい嫉妬をする。“あの人を不幸にしたらゆるさない”、“紅緒さんの身になにかあったら地のはてからでもかけつけて あなたを殺す”と、睨み合う2人。

 そして紅緒と冬星の結婚式当日、くしくも関東大震災が起きてしまう。混沌とするなか、最終的に紅緒は冬星ではなく忍を選ぶ。話をしようと忍が冬星を追いかけると、冬星は「どうしても話したいというのなら…」と振り向き、忍に強烈なパンチを食らわせた。

 忍と冬星は会うたびに火花を散らし、心の中で“彼女を取られたくない”と、闘志を燃やしてきた。美男子で性格も良い2人に愛され奪い合いをされてきた紅緒……羨ましい限りである。

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