『こどものおもちゃ』『赤ちゃんと僕』『美少女戦士セーラームーン』でも! 冷静に考えると結構シリアス…0年代少女漫画キャラたちの壮絶な過去の画像
アニメ『美少女戦士セーラームーン』第5巻

 1990年代は、少女漫画の黄金期だった。『りぼん』『なかよし』『ちゃお』『花とゆめ』といった人気雑誌からは、令和でも語り継がれるような名作が次々と誕生し、当時の少女たちを夢中にさせた。

 少女漫画といえば“胸キュン恋愛”を描いた作品が多い。しかし、登場人物の中には生まれが過酷だったり苦労しながら育っていたりと、ふわふわ胸キュンとは真逆のヘビーなバックボーンを持つキャラクターもいた。

 今回は、少女漫画全盛期の1990年代の作品から、辛い過去を持ちながらも懸命に生きる少年・少女たちを振り返ってみようと思う。

■実の母を探した『こどものおもちゃ』の倉田紗南

 1994年から『りぼん』で連載されていた小花美穂氏による漫画『こどものおもちゃ』は主人公たちの恋愛を物語の中心として描くが、ネグレクト・いじめ・学級崩壊といった重いテーマも扱っていて、大人になった今読み返しても胸が痛む作品だ。

 小学生タレントをしている倉田紗南は、生まれてすぐに母親に捨てられた哀しい生い立ちの少女だ。しかも、捨てられていたのは公園のベンチ。育ての母である倉田実紗子は、洋服にくるまれたまま放置された紗南を拾い上げ、一度は養護施設に預けて母親探しをするが見つからず、自分が引き取ることを決意する。

「紗南」という彼女の名前は、拾った日が「3月7日」だったことから、実紗子が付けた名だ。人気作家であり、自他ともに認める変人でもある実紗子は、6日だったら「サム」になってしまうというボケを入れてはいたが、シビアな現実を名前に込めるとは彼女もなかなか……。

 実紗子は5歳のときに紗南に事実を明かし、「私はどうしても本当の母親に会いたい。だから有名になって呼びかけよう」と母親探しを持ちかける。そして紗南が芸能界で活躍し知名度が上がったのを見計らい、過去をつづったエッセイ『娘と私』を上梓することで世間に呼びかけ、産みの母とついに対面を果たした。

 実紗子に手放されたのではと落ち込む紗南に、自分のそばにいてほしいが紗南の幸せことが最優先だと考えていた実紗子。生い立ちこそヘビーな主人公だが、泣きながら心の内を明かし合い、一緒にいることを決断したシーンは涙なくしては読めない感動的なものだった。

■母親の代わりをこなす小学生『赤ちゃんと僕』

 続いては、1991年から『花とゆめ』で連載がスタートした羅川真里茂氏による『赤ちゃんと僕』だ。同作はハートフルホームコメディながら、ヤングケアラー・いじめ・育児ストレスなど、社会問題にもなっている重いテーマを織り交ぜた、ストーリーも重めな漫画だった。

 母を亡くした主人公の榎木拓也は、小学生ながら幼い弟の育児と家事をこなすヤングケアラー。父親はいるが、仕事もあるので家庭のことはほぼ拓也の役回りになる。慣れない育児と家事に追い詰められてノイローゼ気味になっている姿も、周囲の友だちの家庭と自分の違いに落ちこむ姿も見ていて切なさを覚えたものだ。

 弟の実は2歳という一番手がかかる年頃で、育児では苦労も絶えない。可愛くてたまらないけど、心に余裕がなくてどうしようもなくイライラして怒り、そんな自分に後悔する……というのは子育てするうえで誰しもが一度は体験することだろう。『赤ちゃんと僕』は少女漫画でありながらも、そういった親世代の繊細な心情がリアルに描かれた作品だった。

 そんな時を乗り越え、兄弟がお互いを助け合いながら成長し家族の絆を強めていく様には胸が熱くなったもの。同作では他にもそれぞれの悩みを抱える家庭が登場するが、彼らもまた家族の大切さを教えてくれる素晴らしい存在だった。

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