■長年の想いと努力が実った瞬間… 『BLEACH』黒崎一護&井上織姫

 最後は久保帯人氏による『BLEACH』の黒崎一護と井上織姫。恋愛に鈍い主人公とちょっと変わった思考のヒロインである。甘い関係どころかそんな気配さえ漂わせないふたりだが、織姫の一途さは感嘆に値する。彼女は「何度生まれ変わっても好きになる」と言うほど一護のことが好きで、彼の隣に立てる、彼を守れる強い女性を目指し、常に努力を重ねてきた。その健気さを見ていると、思わず応援したくなってしまうものである。

 一方、一護はとにかく自分が前線に出て、親しい者達を護りたいと考える男。常に行動でそれを実践しており、その行為は彼にとって息をするほど当然のことのようだ。だからこそ個人に直接“護る”と伝えることは珍しいのだが、そんな彼から面と向かって“オマエを護る”と言われた唯一の存在が織姫なのだ。恋愛色のほぼない『BLEACH』でこの事実はちょっと萌える。

 さらに「千年血戦篇」での最終戦闘時、とうとう織姫は一護の隣で戦うことを求められるのだ。嬉しそうに「やっと 黒崎くんを護って戦える――」と思う織姫に悶えるような思いを持った。ずっと守られてきた自分が一護の隣で戦えるという事実が、彼女にとっては最高に嬉しいことなのだ。

 その戦いを経て10年後、彼らは結婚している。一護に名前を呼ばれてエプロン姿で登場した織姫はとても幸せそうで、見ているこちらまで嬉しくなった。

 

 関係性はさまざまあれど、一途な想いが叶った瞬間は見ているこちらも嬉しくなるものである。

 今回紹介した作品はいずれも恋愛が主体の話ではない。だがそこに着眼点をおいて読み直してみるのもまた面白いのではないだろうか。視点がちがうと感じられるものも変わってくるものだ。

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