■元祖こじらせ男子!? デイモスと美奈子の関係

 教訓的な話が多い『悪魔の花嫁』だが、主人公の美奈子とデイモスとの関係にも注目だ。そもそもデイモスが美奈子の前に現れたのは、彼の過去に原因がある。

 遠い昔、デイモスは妹のヴィーナスと愛し合っていた。しかしその関係は大神によって罰せられ、デイモスは天界から追放され悪魔になり、ヴィーナスは吊るされながら朽ちていくという悲劇的な運命を背負った。

 ヴィーナスを救うためには彼女の生まれ変わりである美奈子の体が必要であり、デイモスは当初その目的のために美奈子に近づいた。しかし徐々にデイモスは“美奈子そのもの”に惹かれ、ヴィーナスを助けるべきか、美奈子を守るべきかと悩んでしまう。

 一方、美奈子も当初はデイモスのことを恐れ嫌っていたものの、彼とかかわりを持つうちに、徐々に友人のような関係に発展していくのだった。

 天界にいたころは「わたしの愛はヴィーナスおまえだけ」と、言っていたデイモス。しかし美奈子に惹かれるうちに、気づけばヴィーナスの攻撃から美奈子を助ける立場になっていた。

「わからぬ…わたしはどちらを愛しているのだろう」と悩み続けるデイモスの優柔不断な態度は、元祖“こじらせ男子”と言えるのかもしれない?

 

 以上『悪魔の花嫁』の内容を振り返ってみた。少々ツッコむような感じで紹介してしまったものの、本作の本質は、悪魔・デイモスと出会ってしまった美奈子を通し、人間の心にある善と悪、優しさや残忍さをうまく表現した漫画だ。

 教訓的な内容を寓話のように学べる内容も多く、今読み直しても学ぶことは多い。昔読んだことのある人はもちろん、まだ読んだことのない人も、ぜひ『悪魔の花嫁』を楽しんでほしい。

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