2023年にアニメ化され人気を博した『【推しの子】』アクア&ルビーや、一世を風靡した『鬼滅の刃』の時透有一郎&無一郎、名作『タッチ』の上杉達也&和也、……などなど、昔から双子をテーマにした漫画は人気だ。
とくに昭和の人気少女漫画には「実はあなたには生き別れた双子の兄弟がいる……」といった展開がよく見られ、読者をドキドキさせたものである。今回はそんな「実は双子だった」という展開があった人気作品を紹介しよう。
■蘭世が大好きな人は実は双子だった!『ときめきトゥナイト』
池野恋氏の『ときめきトゥナイト』は、1982年から『りぼん』(集英社)で連載された人気作品だ。主人公の江藤蘭世は、クールな同級生・真壁俊を一途に想う女の子。魔界人である蘭世がその能力を使いながら、俊と距離を縮めていく様子がコミカルに描かれている。
作中登場する魔界の王子・アロンは蘭世に一目ぼれをし、あの手この手を使いアプローチしていく。しかし蘭世が好きな俊は、実はアロンと双子であった。
俊の母はもともと魔界の大王の妃で俊とアロンの双子を生んだのだが、魔界には“双子の王子は不吉”との言い伝えがあり、大王は妃の記憶を消して俊とともに人間界へ追放してしまっていた。
人間界で暮らしていた俊は紆余曲折を経て魔界の王子であることが判明し、アロンの双子の兄であることを知る。蘭世を巡りライバル関係でもある2人は、兄弟だと判明しても仲は悪かった。しかし魔界に災いをもたらす冥王ゾーンとの戦いからは協力関係が生まれ、仲が修復していく。アロンが「ずっとうらやましかっただけなんだ」と叫ぶ仲直りのシーンは感動的だ。
当初、恋愛コメディ要素が多かった『ときめきトゥナイト』だが、俊とアロンが双子の魔界の王子と分かってからは、壮大なファンタジー作品としての色が濃くなっていく。本作の魅力を引き出したのも、この“実は双子だった”という展開がポイントだったのだろう。
■ボーイフレンドの突然の死…その後登場する双子の兄『アタックNo.1』
浦野千賀子氏による『アタックNo.1』は、バレーボールをテーマにした少女漫画だ。1968年1月から『週刊マーガレット』(集英社)、(現:『マーガレット』)で連載がはじまり、昭和のバレーボールブームを牽引した作品である。
本作には主人公の鮎原こずえをはじめ、その親友やライバルなどさまざまな人物が登場する。なかでもこずえを心身ともにサポートしたのが、BFでもある一ノ瀬努だ。
ある日こずえは努と散歩中に、“私は一人っ子だから兄弟に憧れる”と話す。同じく一人っ子の努はうなずきつつも「ほんとうは兄がいたんだよ ふたごのね…」とカミングアウトする。実は努が幼いころ、貧しかった両親はもう一人の双子の兄を親戚に養子に出した過去があったというのだ。
そんな会話をしたあと、努は思わぬ事故に遭って亡くなってしまう。残されたこずえは絶望しバレーへの気力さえ失ってしまうのだが、インターハイ開催地で努の生き別れた双子の兄に偶然出会い、そこから再び情熱を取り戻していく。
本作が掲載された昭和40年代は、経済的理由から子どもを養子に出すケースも少なくなかったと思われる。本作ではそうした社会事情もうまく取り入れ、生き別れた努の兄とこずえとの関係をバレーを通して感動的に描いている。