アニメと声優は切っても切れない関係だが、第81回ゴールデングローブ賞でアニメ映画賞を受賞した宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』で火野正平さんや小林薫さんや菅田将暉さんや柴咲コウさんといった俳優陣が声優を務めていたように、アニメ作品でベテラン俳優がキャラの声を担当するケースは少なくない。
俳優の起用は古くからあるものの、中には後の大御所俳優が無名時代に出演していたという作品もあり、後になって見返したときに「意外な俳優」の出演に驚かされることもある。今回は、90年代の「ジャンプアニメ」で声優に抜擢されていた人物を見ていこう。
■『こち亀』に出演していた堺雅人さん&八嶋智人さん
まずは1996年から放送されたテレビアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』より。
同作では主人公・両津勘吉役をラサール石井さんが務め、秋本麗子役を森尾由美さんが務めていたが、当時はまだ無名だった堺雅人さんが白鳥麗次役として出演している。
白鳥麗次は「白鳥鉄工所」の御曹司で自称「スーパー金持ち」のボンボンキャラ。全身に高級ブランドを身につけ、スーツの裏地に1万円札を貼り付けているという成金趣味の持ち主で、最終的にはいつも一文無しになってしまうというギャグ担当でもある。
このキャラを演じていたのが、後に『半沢直樹』や『VIVANT』などで国民的俳優になる、当時はまだ無名俳優だった堺雅人さん。アニメでは2019年の映画『プロメア』でクレイ・フォーサイト役を務め、その迫力ある声が高く評価されたが、堺さんの声優仕事が見られる貴重な作品のひとつだ。
白鳥麗次はお馴染みの派出所メンバーの1人。ほぼ毎回登場シーンがあるレギュラーキャラだ。アニメ版『こち亀』は、テレビ出演がほぼ無い時代の堺雅人氏の演技が、レギュラーで見られる貴重なアニメである。
同作は『テニスの王子様』など2.5次元舞台のプロデュースを行うネルケプランニングが声優キャスティングを行っており、同会社の立ち上げに関わった俳優・八嶋智人さんがちょい役としてチラホラと出演している。
八嶋さんが出演したのはドラマ『HERO』やバラエティ番組『トリビアの泉』で注目される以前で、この頃はまだ堺さんと同じく無名俳優時代。白鳥麗次の父役や、パチンコ景品のワニ役、武器商人の弟であるアダヤダ・カダブラ役など、レギュラーではないものの、多彩な配役をこなしており、意外な下積み時代の片鱗を見ることができる。
■『ジャングルの王者ターちゃん』ターちゃん役の岸谷五朗さん
同じくジャンプアニメで声を担当していた俳優といえば、1993年10月から約1年間に渡って放送された『ジャングルの王者ターちゃん』で、主人公・ターちゃん役を務めた岸谷五朗さんもそうだろう。
1月7日からスタートしたNHK大河ドラマ『光る君へ』で主人公・まひろの父である藤原為時を演じるベテラン俳優の岸谷さん。アニメが開始された1993年時点でもすでにラジオのディスクジョッキーとして有名であったが、『妹よ』や『みにくいアヒルの子』などのドラマでブレイクするよりは少し前となる。なかなかに異例の起用といえるターちゃん役と言えるのではないだろうか。
とはいえ、とぼけた感じの演技がターちゃんに絶妙にマッチしており、ぴったりの配役。アニメ自体も好評で、1年で奇麗に最終回を迎え、その後も数本のスペシャル特番が作られる人気作となった。