■古き悪き会社の風習に立ち向かう女性社員!『悪女(わる)』

 深見じゅんさん原作の『悪女』は「わる」と読み、落ちこぼれOLの主人公・田中麻理鈴が、一目惚れしてしまった素性のわからない男性社員への恋心がきっかけで仕事に邁進していくストーリーだ。

 三流大学卒で、コネ入社。そんな麻理鈴が恋心というある意味不純な動機ではあるものの、彼にふさわしい女性になろうと仕事に奮闘する姿は可愛らしく、勇気をもらえるものだった。

 1992年に実写ドラマ化された際には主演に石田ひかりさんをむかえ、布施博さんや渡辺満里奈さんなど旬なキャストが名を連ねた。キャラ設定やストーリーなどはドラマ版独自のアレンジが見られるが、麻理鈴が会社にはびこる“パワハラ”をはじめとする問題に切り込んでいく様子は、見ていて痛快だ。

 そして本作は、2022年に今田美桜さん主演で、再びドラマ化されている。なんと前作で麻理鈴を演じていた石田さんが人事部課長の夏目役として起用されており、平成版『悪女』のファンは驚いたことだろう。

 共演した渡辺江里子(阿佐ヶ谷姉妹)さんも当時本作のファンだったといい、課長となった石田さんの姿を見て「麻理鈴が成長して立派になって、みたいなおばちゃん的な感覚もあり……」と、まるで麻理鈴が課長に昇進したかのような気持ちになったのだとか。

『悪女』は平成時代の社会に少なからずあった“男尊女卑”をはじめとする女性への差別にも鋭く切り込んでおり、令和のいま見返してみても新しい発見がある作品だった。そしてさまざまな問題に取り組み実現していく、麻理鈴のバイタリティーには憧れずにはいられない。

 

 かつて“働く女性”への風当たりは強かった。そして令和のいまでも一部では解決しきれない問題が息をひそめている。今回ご紹介した作品たちは、“働く女性”の強い姿を見せてくれるものばかりだ。

「風習だから」と諦めることなく、立ち向かって自分の権利を主張する彼女たちの姿は、多くの女性たちを勇気づけ、新しい風を吹かせてくれるものだった。

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