■「やろう、ぶっころしてやる。」
ドラえもんが言ったとは思えないほど治安の悪いこのセリフは、ドラえもんがドラえもんにこき使われるというカオス回で発した一言だ。1971年の「小学三年生」収録時のタイトルは「宿題でたいへん」だが、コミックス5巻では「ドラえもんだらけ」に変更されている。
あらすじは、のび太からどら焼きと引き換えに大量の宿題代行を頼まれたドラえもんが、タイムマシンで未来の自分を連れてきて宿題を手伝ってもらうというものだが、これがかなりバイオレンスな展開を巻き起こす。
まず現代のドラえもんは2・4・6・8時間後の自分を連れてくる。が、なぜか時間が長くなればなるほど未来の自分は怒っていて袋叩きにされてしまう。やっとの思いで全てを終わらせて寝ようとすると2時間前のドラえもんが現れ、「宿題を手伝え」と連れ出されてしまう。終わって寝ようとすると、今度は4時間前の自分が登場。
6時間前のときにはのび太に匿って貰うが、「彼がいないと宿題は終わらない」といわれたのび太はあっさりと引き渡す。疲れと睡眠不足がピークだったドラえもんはブチ切れ、8時間前のときにはついにスパナを振り回しながら「やろう、ぶっころしてやる。」と過去の自分を追いかける怒りっぷりを見せるのだ。ただ、アニメ版はこのセリフが少しマイルドな表現に変えられている。
■「口きくのもめんどくさけりゃ、もう死んでしまえ。」
「てんとう虫コミックス」18巻に収録された「テレパしい」でも、ドラえもんは毒舌を披露していた。
ある日ぐうたら中ののび太は、ドラえもんに「ア…」や「ウー」の単語とジェスチャーで「窓を閉めて」と伝えようとする。しかし言葉にしないので上手く伝わらず、ドラえもんは「アーとかウーで伝わるものか」と反論されてしまう。
しかし悪びれないのび太はさらに「考えていることが伝わる機械はないか」と怠惰の極みなセリフを吐く。それに対してドラえもんは怒り、「口きくのもめんどくさけりゃ、もう死んでしまえ!きみにはあきれた、じつにあきれた!」と恐ろしい言葉を放ったのだ。
やや言い過ぎな気もするが、ここまでどうしようもないのび太の態度を見るとドラえもんの気持ちがわからないでもない。
そしてドラえもんは、のび太を懲らしめるために考えたことが相手に伝わる「テレパしい」というアイテムを渡す。楽になったと喜ぶのび太だが、お母さんは小じわが増えただの、静香ちゃんはおだてておけば宿題をやってくれるだのといった余計な考えまで全部伝わってしまい次々と人間関係がこじれていってしまうのであった。
ドラえもんの辛口発言の多くは、のび太に向かって言っている。ほかにも、「のろまだ!ぐずだ!」や「いくじなしの弱虫の泣き虫」など、ストレートに批判的な発言をしていた。とはいえ、のび太ものび太でドラえもんに対して辛辣な言葉を投げかけているし、実際に怠け者なのでおあいこなのかもしれない。