■風音、チャイム、叫び声……いまでもビクっとなる効果音の秀逸さ

 テキストを読ませることに最大限の配慮がなされているサウンドノベルですが、もうひとつの特徴であるサウンド面も本作を語るのに欠かせません。『弟切草』と比べても曲数が増えているだけでなく、シリアスな曲からコミカルな曲までバラエティに富んでいます。しかし、サウンドノベルシリーズでもっとも気になるサウンドといえば、効果音に他ならないでしょう。

『かまいたちの夜』

 窓の外を吹き荒れる吹雪と軋む窓、ペンションに響く女性の叫び声、つい振り返ってしまう玄関のチャイムなど、プレイしているとドキッ、ビクッっとなる効果音が豊富に、そしてその名の通り効果的に使われているのです。

 私は隙間風の入るアパートで初めて『弟切草』を遊んだときの臨場感がいまでも忘れられず、いまでもサウンドノベルシリーズを遊ぶときはヘッドホンは使いません。裸耳だからこそ部屋という空間込みでリアルなプレイ感を味わえるのではないかと思うからです。ちなみに私が聞いていて一番怖い効果音は、階段を移動するときに「ギギッ……」って軋む音ですね。日常的に聞いているからこその、自分以外が出すその音にビクッっとなるのかもしれません。

『かまいたちの夜』

■いつまでたっても色あせない面白さ。記憶が薄れた人ほど遊びごろ?

 推理小説の弱点は、一度読んでしまったら犯人が分かってしまうこと。本作も同じ弱点を持つゲームですが、正直29年近くも経って記憶が薄れてしまっているのは私だけじゃないはず。

 つまり、当時『かまいたちの夜』を遊んでいた人ならば、いまは2度目の遊びごろだともいえるのではないでしょうか。しかもただの推理小説とは違って、一度クリアしたとしても別の選択肢を選べば違う結末も楽しめるし、新たに生まれたまったく異なる物語をもう一度楽しむことができるのです。秋の夜長が来る前に秋が終わってしまった観もありますが、久しぶりに読書の時間を『かまいたちの夜』に置き換えて夜を過ごしてみてはどうでしょうか。

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